母の元上司の方と母を見舞った後 父も見舞って下さる事になりました
病院は別々ですが 歩いて五分程の所にあります
この上司の方は父の事をこうおっしゃってました
当時の僕はまだ若かった その時に 九美ちゃんのお父さんから 素晴らしいカメラを見せてもらったんだよ 僕なんてとても買える物ではなかったんだ…
そんなお話をしているうちに 父の病室へ到着 父と上司の方は半世紀ぶりの再会となりました
お父さん 所長(当時)様が来て下さったのよ 目を開けて
そう言いましたら 父は目を開け 所長様をじっと見ながら 本当に言葉が出たら
「えー!」と口にしてびっくりするくらい 目を見開き眉毛も動かせてくれました
上司の方は これなら大丈夫だ お父さんは分かっておられる
そう 力強く言って下さりました
…
両親のお見舞いが終わり 昼食をご一緒させて頂く事になりました
私は…
約半世紀前の本当に末端の部下の当時四歳の子供の願いを
その子の存在を忘れる事無く覚えていて下さり また嫌な顔一つせず 三年間だけだった部下の母を見舞って下さり また耳の遠くなった母に何度も同じ事を伝えたり 私はそのお優しさとお心の広さに感動致しました
本来なら 私なんかが声をおかけしても届かない 遙か遠くの雲の上の方
なのに そんな私の願いを叶えて下さりました
九美ちゃん
僕の後輩にね、世界でも名の通る一流企業の副社長になった人物がいるんだ
以前 その後輩に会う事になり 連絡を取ったんだよ
その副社長は、その会社の役員も入れない来賓の部屋を持っているんだ
その部屋に 僕を通してくれて そして本当に先輩として 大変感激して迎えてくれた
大企業の副社長
そうであっても 偉そうにせず 受けた恩は忘れず 腰の低いこの後輩を見て だからこの人物は大きくなったんだと思った
成功する人間には 運も大切だ でも 腰が低い事も大切なんだ …
そして九美ちゃん
君は親想いだ 親の為に…
そう言って下さりました
私はもっとこの母の元上司の方のお話を聞きたいと思いました
今まで 何千人と部下を持たれたでしょう
きっと その部下のお子様にも 私に接して下さったのと同じ様に 同じ目線で接して来られたのだと 感じました
母の尊敬した上司は本当に素晴らしい方でした
…バス停での握手
私は生涯忘れません