このお話は もう何十年も前に 私が読んだ書物の中にあった お話です
実話ですが 一部記憶が薄れている部分は 私が補足し 記憶に残しております
皆様
どうかお読み下さい
そして どうか 気づきを得て下さい
定年を間近に控えた初老のご夫婦がおられました
ご主人様は ずっとワンマンでした
仕事から帰っても
風呂 飯 寝る
妻の 一度でいいから旅行に連れて行って…
その言葉にも
行きたかったら お前が一人で行け!
奥様は ずっとご主人に尽くしてきた自分へのご褒美に ご主人様の退職金が入ったら 夫婦で仲良く一泊旅行を計画されておられました
…慌ただしかった子育て時代
子供二人も片付き
これからやっと夫婦水入らず…
旅行の話は断られるだろうな…
奥様は精一杯強がってご主人を誘ったけど 答えは想像通りでした
奥様はいつものように朝食の支度
そして ご主人様のお弁当の用意…
そこで奥様の意識はなくなりました
ドン
台所で鈍い音がしました
新聞を見ながら朝食を終えたご主人が
慌てて台所へ行くと いつも笑顔の奥様が 倒れていました
声をかけても返事がない
救急車を呼び 病院へ ご主人は 言いようのない不安と 胸苦しさで 処置室の前で待つ
先生の言葉に
頭をハンマーで殴られたような衝撃を受け 処置室に入ると
笑顔のまま眠っている まだ温かい奥様が処置台に横たわっておられました …
脳溢血
奥様のお葬式が終わり 妻がいなくなった事がまだ受け入れられないご主人様は
広い家に一人…
いつも妻が食事を作ってくれていた台所
何気なくグリルの中を見ると
焼きたらこが一つ
慌てて取り出すと
既に干からびて硬くなっていました
あの日 俺の弁当のおかずに入れようと 焼いてくれていたんだ…
倒れる前に 火を止めたのか?…
その焼きたらこを一口 口に入れてみた
苦い涙の味がした
大声をあげて 泣きながら 妻の部屋に入った
妻を探した
机の上には 小さく畳んだ旅行のパンフレット
行きたかったんだ
あいつは俺と旅行に行きたかったんだ…
どうして
どうして 行こうと言ってやれなかったんだろう
何十年も俺に寄り添ってくれたあいつ
どうしてもっと
優しくしてやれなかったんだろう
神様
時間を戻して下さい
神様
…