誕生日が2つある男。
望まれずに生まれてきた子。
まだ若い両親が彼の出生届を出したのは生後3か月。
その間のイキサツとか詳しくは知らないけど、
彼の誕生が祝福されてなかったことは察しが付く。
ホントの誕生日が別にあることなんか、わざわざ伝える必要ないのにと腹が立つ。
10代の両親の生活は子どもが生まれてからも変わらず、
彼が小学生になるころ母親が家を出る。
父親と2人の生活はひどいものだったけど、それなりに楽しさもあったらしい。
1年後、母親が彼を迎えに来て両親は離婚。
母親の実家で生活を始める。
が、ホステスをしていた母親は全国を転々とし、彼も転校を繰り返す。
次々に違う男と親しくなる母親を見て寂しさを感じ、
自分は誰にも愛されていないと荒れた10代を過ごす。
そんな彼も大学を出て商社マンになり、
『女として生きるのを選んだ母親も今では好きだよ』と言う。
あたし彼と7年くらい前に知り合った。
当時、30代半ばで独身の彼に
『結婚しないの?』と聞くと
『子ども欲しくないから難しいかもね』と答えた。
『子どもキライ?』と聞いたら
『この血はオレで終わらせたいね』って。
なんだかんだ負の連鎖はあると思うし、恐れるのも分かる。
あたし達は毎日ちょっとずつ話し、何度か飲みに行ったりして
だんだん親しくなっていった。
あたしは基本的に意地悪だけど、彼にはいつも穏やかで優しい気持ちでいられた。
彼はいつもあたしのことを『こわい』って言ってたけど。
そうこうしてる間にあたしは夫と別居した。
彼とはまったく関係ない理由で。
そして、そのころ彼に『オレで現実逃避しないでね?離婚するまで会いたくない』
と言われ、それから5年、1度も会っていない。
それでもしばらくは、よく話していた。
でもだんだん話す回数は減っていき、連絡もつかなくなっていった。
たまーーーに連絡があったと思ったら『離婚したか?』と聞かれたりした。
あたしは月に1回くらいメールを送った。
返信はあったりなかったりだったけど。
今じゃ年に数回だけど連絡し続ける。
かと言って思い続けてるわけでもなく、
運転中に熱唱して失神する男の子を大好きになったりした。
そんなときでも彼が元気か気になった。
もしも前世とかがホントにあるなら、あたしは彼の母親だったんじゃないかと思う。
まぁそんなことはどうでもいいんだけど。
こないだ彼が夢に出てきた。
夢の中の彼は痩せて、おじいさんみたいになって、視力を失っていた。
そして泣いていた。
あたしも泣いて目が覚めた。
なんだか怖くなって数か月ブリに彼にメールしたら、珍しく返事があった。
元気そうでよかった。
なげーよ!!って話。