ひなたは、3月に全校生徒の前で自分が「男の子」だとカミングアウトすることになりました。


元々から「自分は男の子だと」言って分かってもらいたがってたひなたでしたが、とりわけ大きなきっかけになる事件が先週月曜日に起きたのです。


それは体育館で6年生を送る会の準備をしているときのことでした。

副担任の先生が、「男子はこちらを手伝ってください」と呼びました。ひなたも自分のことを男子だと思っているのでそちらに行ってしまいました。クラスの子達が反応します。

「女の子じゃん!」

何人かの子達、ひなたの友達以外の子が口々にそう言いました。その中には、ひなたが前にトランスジェンダーのことを説明して分かってるはずと思っていた子もいました。ひなたは泣き出しました。

先ほど指示を出した先生が、ひなたに謝ります。ひなたさんのことを忘れてつい言ってしまったとのことでした。ひなたは先生に連れられて別室で休みましたが、二時間ほど泣き続けたとのことでした。


ひなたが帰宅してすぐ、そのことを聞いた私は、学校に電話をかけました。担任に、今日のことを確認すると、こうお願いしました。

「すみませんけど、クラスだけでもいいので、ひなたのために1分だけ時間を下さい。性別のことをカミングアウトさせて下さい。」

担任は、教頭先生に伝えておきますと言い、しばらくして、教頭先生から電話がかかりました。教頭先生は、

「これからもこういうことが起こると考えられますか?」

「はい」

「言うとなるとカミングアウトということになりますので学校でお話をうかがいたいのですが、急がれますか?」

「はい。ひなたの状態から考えて、出来るだけ早いほうがいです。学校での腹痛やチックなどの症状も出ていますので。」

そして、次の日に面談になりました。


私は教頭先生から校長室に案内されました。二回目でした。一回目は、「性はにじいろ」の授業をするのでチェックを宜しくお願いしますと言われた3ヶ月前でした。


校長室には、校長先生、担任、保健室の先生が入ってきて、合計五人での話になりました。

「話しやすいところからどうぞ」と教頭先生に言われ、まず昨日の体育館での件の確認について話し出しました。私が一言言うと、四人ともカリカリカリカリと音をたててメモを取っていました。

昨日のことに続いて、腹痛の頻度について話しました。腹痛は2日に1回くらいだけど、学校でしか起きないこと、でも家で学校の話をしているときには1度起きたことがあると話しました。そして、片目をつむるようなチックも主に学校の話をするときに見られると。本人の精神安定のためにも、(ご存知のとおり)スクールカウンセラーさんに毎月話すようにしているということも伝えました。


次にカミングアウトの範囲について確認がありました。

「クラスだけでもと言いましたが、出来れば3年生までか、全校生徒にか。」と答えました。


そして、カミングアウトしたほうがいいと思う理由について、11月にせっかく「性はにじいろ」の授業をして頂いたけど、生徒達の中で授業内容とひなた本人がつながっていないと伝えました。大人でもトランスジェンダーという言葉や、テレビの芸能人などでどういう人かを知ってはいても、もしかしたら目の前のその人がそうかもしれないと思いながら話す人はまずいない、子供となればなおさらだと思うと伝えました。


「カミングアウトしても、全員がすぐ理解しないかもしれない、3年生くらいは理解力に大きな差がありますので。そこは大丈夫でしょうか?」と聞かれたので、「はい、本人にもそれは伝えていて、誰でも100点じゃないからね、と分かっていました。」と答えました。


それから、ひなたの症状の重さの目安になることを思ったので、「トランスジェンダーには三種類あるんです。一つめはトランスヴェスタイトといって服装だけを異性のものとされるものにする人々。」教頭先生はなるほどという声を出してメモされていました。「二つ目は通常トランスジェンダーと言われる、社会的な性別の扱いに違和感を覚えている人々。そして、三つ目はトランスセクシャルといって、自分の体が間違っていると感じる人々です。ひなたはその三つ目なんです。それもその中でも最も重度なもののようです。」


そして、病院のことについて聞かれたので、最初のクリニックの名前を言い、そこでの診断も性同一性障害とのことだったということ。ただ、そこで大学病院を紹介されたけれど、そこはひなたには合わなかったので、他のところに良いところがあったから問い合わせをしているという話をしました。


あとは友達関係のことなどを話しました。こちらの小学校ではない近所の友達は、ひなたのことを本当に男の子だと思っているということ、最近、学校で友達から仲間外れにされたことなどでした。


「カミングアウトで悪い結果になると思うことはありますか?」と聞かれたので、特に思いつきません。むしろ今が最悪の状態なので、と話しました。


「性自認が変わる、という話についてはどう思われますか?」と聞かれたことには、「ひなたがいわゆる普通ではないと気付いたのは以前からで、小さいときから男の子しか仲間だと思ってないようなふしがありました。なかなか変わりづらいのではないかと思います。」などと話しました。


教頭先生は、

「中学生のカミングアウトの情報はあったけれど小学生のは見つからずに、前例がないということで教育委員会にも相談します。」と言いました。そして、「カミングアウトの方法はどうされますか?例えば校長先生に説明してもらうとか。」と聞かれました。

「そうですね、子供だけだと説明が難しいですので、先生が説明されたあとに本人がカミングアウトという形でしょうか。」と答えました。


後日に経過を報告するという形で聞き取りは終わりました。


そして、昨日、カミングアウトが決まったと報告がありました。ひなたさんが、皆に伝えたいことを紙に書いてきて下さいと。



あとがき

なかなかない事例になってきました。これは、ひなたの隠し事の出来ない性格、伝えたい思いがあって実現することです。

色々あってどん底の状態から明るい道へ戻れますように。ひなたの道を歩けますように。

On the sunny side of the street

このブログに託した願いでもあります。