現在、トランス男子のひなたくんは8歳です。

ひなたくんが2023年9月に、「僕は男だ」と言うまでにあったことを書いていきます。


ひなた(仮名)は2015年3月に産まれました。出生時の性は女の子とされました。

名付けた名前は偶然にも、この仮名と同じようにジェンダーレスです。偶然なジェンダーレスネームに胸を撫で下ろす日が来るとは、その頃は予想してませんでしたが。


産まれてから3歳まではとりわけ変わったことはなく、女の子の服を着て髪も長くして育ちました。


以下は、男女のジェンダー二択で男の子の方を選んだことですが、それならば通常は趣味の問題ですむことでした。では、なぜそこから疑問が出たのか、それを最後に記します。


☆3歳頃


最初の記憶は3歳8ヶ月時の七五三。衣装を選ぶとき、ひなたは男の子の衣装を指差して「これがいい」と言ったので、「そっちは男の子用だからこっちから選ぶんだよ」と女の子の衣装の方を指差したのですが、しばらくするとまた、男の子用を見て「これがいい」と言ってました。七五三は親戚に写真を見せたりするから、そこは自由にはさせられませんでした。その頃は保育園年少組でした。


3歳児検診のとき、歯ブラシが貰えて、ひなたはピンクと水色の二択で水色を選びました。保険士の方がもう一度選び直させてたけど、やはり水色を選んでました。これは、私の方が好きな色なんかどっちでもいいのに女の子はピンクを選ぶはずという先入観と感じました。


☆保育園年中から年長の頃


父方の祖父祖母が夫と共にひなたを外食に連れて行ったとき、店のひな人形を見せてたのですが、隣の売り場にあった鯉のぼりを欲しがるので買ってあげたら、すごく喜んで興奮状態で走り回った、と夫から聞きました。

その頃のことを本人に聞くと、「男の子のかぶとと鯉のぼりがうらやましかった」と言ってました。

遊び友達は男女どちらもいたのですが、とりわけ気に入っている子は男の子にいました。保育園でのブランコで、男の子と「う○こ~ち○こ~」と叫びながら遊んでました(^^;

好きなアニメはアンパンマン→トーマス→ポケモン、おさるのジョージといったところでしたが、このへんも女の子がトーマス好きでも全く問題ないし、トーマスは話の筋書きがしっかりしているので特に気にしてませんでした。おさるのジョージは教育に良いいろんな知識を学べるジェンダーレスな番組です。

プリンセスには全く興味を示しませんでした。「めいさくえほん」を買って読んであげてましたが、それは男の子用と女の子用があり、女の子用でも、動物の話には興味を示してましたが(家に犬と猫がいて動物大好き)、男の子用に載っている桃太郎や一寸法師、ジャックと豆の木などを読んでもらいたがりました。ただ、一般常識として知っておいた方がよいかと思ったのと、せっかく買ったのにもったいなかったので(笑)見かねてお姫様の話も読んであげてましたが、特に興味はないままでした。


小学校入学時、1年生のときは男女どちらとも遊んでいました。それはどの子もそのようだったので特に目立つことはなく。ランドセルの色は茶色でした。それもどれでもいい感じで選んだものでした。保育園の頃から周りの親御さんは、「うちの子は服を選り好みするようになって大変」と言ってましたが、ひなたは全くだったので親の好きな格好をさせてました。私は、服を選んで綺麗な格好をさせるのが好きだったので、自分の好きな服を着せ替え放題でした。本人にその頃のことを聞くと「興味なかったから」と言ってましたが、確かに、保育園の先生に褒められても無関心な様子。ただ、「ママが買ってくれた、ママ買ってくれてありがとう。」と自分のためにしてくれたことそのものに対するお礼はいつもありました。


1年生から2年生にかけて、色の好みは少しずつ出てきました。友人がくれた中で好きなパッチンどめを選ばせたら、その中で最も地味な和風の濃い青にトンボの柄。そのときは「渋いね~(^^)」くらいの声かけで、若い感じのしない趣味が面白いと思ったくらいでした。


公園に連れていくと、そこにいる子に積極的に声をかけるのですが、決まって男の子。相手は最初びっくりしていてもフレンドリーなひなたにすっかり慣れたようで、帰るときは相手の男の子は自分の名前を大声で名乗って、また遊ぼうと見送ったこともありました。ひなたは得意気に「ね、男の子だとすぐ仲良くなれるんだよ」と言ってました。


そんな感じだったので、学校が終わってからの学童でもすぐ友達が出来ていましたが、ある日、学童の先生が、「ひなたさん最近、学童のことで嫌そうにしてませんでしたか?」と聞いてきました。「どうかしたのですか?」と聞くと、「ひなたさんは男の子に人気があって、ひなたさんの隣で宿題をしたいと毎日ケンカがあっているんです。」私はあっけにとられて「はぁ」と言ってました。モテモテなのかな、とその時は思いました。ひなたの方は、「順番を決めているから」と言って、たまに自分まで殴られるのは困るけど、とは言ったものの、そのこと自体はそこまで不快ではなさそうでした。


2年生になると特定の仲良しグループが出来たようで、それは男の子2人とひなたの3人組でした。その子達がゲームにはまっていると聞いて、うちでもswitchを買ってあげました(私もしたいというのもありました笑)。


ひなたはマインクラフトの絵が上手で、あのドット絵を定規を使ってサクサクと描き、上手く再現します。女の子がよく描くような女の子の立ち姿は描いたことのないひなたでしたが、絵は本当に上手で、色んな子がひなたの描いたゲームの絵を欲しがります。それは、マインクラフト、ルイージマンション、カービィ、にゃんこ大戦争と今も続いています。


2年生の夏休み前、ストリートファイターも一緒にしました。その時、ひなたの選んだキャラはザンギエフというロシアのプロレスラーと、ブランカという野人。カッコいい主人公のリュウやライバルのケンよりもそっちが好きと言い、女性キャラの春麗やキャミィ、イケメンのバルログには見向きもしません。

「何かおかしくない?」

夫に聞きました。夫はしばらく考えてから、ひなたに聞きに行きました。

「ひなたは男の子になりたいの?」

私は思わず笑ってしまいました。それを聞くの?って。ひなたは、

「え、そんなわけないじゃん。私はただ、男と遊びたいだけだよ。」

「ふむ」

その時はそれで済んでいたのです。単に男の子と気が合うんだと。


ただ、夫はなにも考えずにそういうことを言う人ではありません。そこからでした。たぶん普通の子ではないのだろうと思い始めたのは。


後に、つまりそれから1年と少し後(ひなたのカミングアウト後)に夫にその時の事を聞きました。まさか、トランスジェンダーだと気付いていたの?と。夫はこう答えました。

「あれを聞いたのは俺の中でその確率が50%を超えたから。男と女の二択で選んでいくとする。好きな色、好きな趣味、最初の方はどっちを選んでも気にならないよ。そんなの個人の趣味に過ぎない。でも、10回連続で男の方を選ぶ確率は?」

「…1024分の1」

「そういうこと。そして、人間は自分に近い方に親近感を持つ傾向があって話しかけやすいんだ。ひなたはいつでも男の子に声をかけていた。そして、前に、『女の子とは遊ばないの?』と聞いたことがあるんだけど、すると『女の子は意地悪だから』と帰ってきたんだよ。意地悪されたことのある○○ちゃんが意地悪とかではなくね。」

「それはまた極端な。まとめて切り捨てるがのごとく。」

「そう、それを本人が言ったことに意味があると思うんだ。普通は男の子と気が合うからって女の子を嫌いにはならないよ。」

「確かに。」


それからおよそ1年の間で、50%の数字は加速していくことになり、3年生の9月を迎えることになります。次回はその話をしたいと思います。