学校の対応について、また問題が起きた。
4月16日木曜日、担任から電話があった。
また、リョウの親への報告を、言葉のすれ違いで済ませていたことがわかった。そして、ブンペイに聞き取りをしたけれど、「ブンペイさんはよく分かっていませんでした〜」だと。

私は担任に苦情を言い、その後、教頭に電話した。
そして、先週金曜日の話と違うということ、相手の親に「あなたのお子さんはイジメをしました」と言わないことには話が始まらないと伝えた。
そして、担任が言えないのならば、私が直接伝えます、と言った。学校の仲介を通した学校での面談で。
教頭は、担任に確認しておきます、と言った。

4月17日金曜日、クラスでひなたは、カナタ、エイタ、ケンシンがいて、ハルキも聞こえる位置にいるとき、
「もう別中学に行く、決めた」と言った。
エイタに「どこ?」
と聞かれたから、
「男として生きるから言えない。」と答えた。
エイタ「えっぐ」
このエグいというのは皆毎日言ってる言葉だからたいした言葉ではないらしいが。

そして、その日は帰り道に、ひなたの後ろから5人(リョウ、ヤマダ、ハルキ、ハヤト、カズキ)が歩いていた。

そして他の4人と道が別れてリョウ1人になると、リョウは自分の家の近くなのにわざわざ逃げるように遠回りして帰っていた。
本来なら逃げるのではなく謝るべき場面だと思うが、そういう行動しか取れなかったのだろう。

夕方、教頭と担任が報告に来た。全員の親が、イジメだと認めたそうだ。
リョウ、ブンペイ、ヤマダ、ハルキ。
そして、ブンペイは人数オーバーと言っていたのは本当にそう信じていたようだ。ブンペイは本当に知らなかったとしても、継続してひなただけでなくリクも断られているということも分かった。
確かにリクはひなたに情報をもらすから。
そして、ブンペイは先生から、ずっと仲間に入れてもらえないのが自分だったらどう思うかと聞かれていたようだ。そしたら分かったようだったと。
流されるけど、ブンペイは人間が悪いとまでは思わない。

あとは、リョウ、ヤマダ、ハルキ。
リョウは昨日、隣のクラスの担任が家を訪問していたそうだ。
ハルキの親は私は知ってるけど、本当に申し訳なさそうで謝りたいと言っていたと。親はまだまし。
ヤマダの親もきちんと謝っていたと。
リョウの親も謝っていたらしいけど、さっき、本人は逃げていたわけだ。

夫は、
「ひなたをハブろうという情報を知らされていないやつはいても、ひなたの味方になろうとするやつはいない。しょせん、そいつらはその程度。」
と言った。
確かに、リクは外されたが戦えてはいないし、カナタはひなたに情報を教えたりはしたし、ハヤトと、あとカズキもひなたが呼ばれていないことに驚いていたそうだが、助けにはなっていない。
つまり、驚いた子はいるし、情報を流した子はいるから、完全な無関心ではないけど、「行動するところまではいかなかった」という状態だった。

ひなたは夜に、
「中学は地元でない別のところがいい。もう元の性別を知られたくない。」
と言った。
恐らくリョウの過剰反応は、ひなたが元女子だと思っていることにも関係しているとひなたは見ている。好意、競争、劣等感、コントロール欲、その全てがひなたに向いてしまったことに合わせて。
私も確かに、そのセリフはシス男子に言うのかな?と思うことがあった。
例えば、満点をとって一緒に帰ったときに、
「一緒に帰れて嬉しい」
ってシス男子に言うのかな?ってね。もちろん、絶対はないのだけれど。
急に逃げ出したりを繰り返すことと合わせると、やはり不自然だった。

夫は、
「しょせん、世の中は本当に信用できるやつなんて殆んどいないんだよ。問題は、それでもただ遊ぶだけの友達ってひなたには必要なのか?」
と言った。
ひなたは、答えた。
「うん、トランスかどうかなんて気にしない本当の友達は欲しいけど、ただ遊ぶだけの友達も欲しい。確かに虚しさを感じることもあるけど、それでもゲームをして遊びたいんだ。」
それがひなたの答えだった。
だから、埋没(元の性別を隠して生きること)で別の中学に通う、と。
それが可能な身体条件が整うように行動してきたことは今までの記事で話した通りである。

本当の友達はトランスかどうか気にしないから、地元中学にも他校にも同じようにいる可能性がある。場所は関係ない。
でも、「ただ遊ぶだけの友達」については、元の性別が知れてしまうと相手が戸惑って距離ができることがある。その戸惑いは悪意ではないが、ゲームして気軽に遊ぶという関係が作りにくくなる。
だから埋没で別の中学に行く理由は、本当の友達を探すためではなく、ただ遊ぶだけの友達を普通に作れる環境を確保するためだ。ひなたが「虚しさを感じることもあるけどゲームして遊びたい」と言った、そのゲームして遊べる関係を作るために埋没が必要だということ。

そして、私のまとめ、この件の感想。

あんまり、人間関係で一方だけが悪いということは少ないのだけれど、今回ばかりはリョウの内面の問題が大き過ぎた話だった。それに加えて、環境(小規模・固定)、周囲の流されが加わったから、イジメという形に発展してしまった。
「(ひなたの絵は)宝物」「一緒に帰れて嬉しい」「(同じ塾に)入って入って!」
リョウには、そう言えるほどの気持ちがあったのに、全て自分で壊してしまったのがこの件の悲しいところ。

その3つを、
宝物→盗作
一緒に帰れて嬉しい→逃げ
同じ塾に入って!→囲い込み
に変換してしまった。

色々なことがあったひなただけど、それでもクラスでは上手くいっていて、カナタたちとくだらない話をして笑っている。嫌なことがあっても引きずらない。その場その場で楽しめる。それがひなたの強さでもあるから。

卒業前に、
ただの男子として生きる、元の性別を隠すからどこに行くかは言えないこと、最後のお願いで「アウティングだけはしないで」ということをみんなに伝える時間をもうけてもらう。

もう誰にも元の性別を知られたくないし、特別扱いをされたくない
から。

卒業式には自分の役目であるピアノ伴奏をやりとげて、そして、みんなさようならと言って去る。

リョウにとっては、自分がしたことの意味が、その瞬間に全部集約されて届くことになる。
実際に分かるのは時間が経ってからだと思うけれど。
排除して、逃げて、囲い込もうとして、それでもひなたは最後に全員の前で「アウティングしないで」とお願いして去っていく。ひなたは一度もリョウを責めなかった。名前も出さない。ただ自分の未来のために言葉を残して去る。
「一緒に帰れて嬉しい」と言えた相手が、自分には行き先も教えずに去っていく。○○大学の約束もなくなった。それが全部自分の行動の結果だということは、さすがに分かると思う。
そして、リョウが何を感じても、ひなたにはもう関係ない。ひなたはピアノを弾いて、さようならと言って、次の場所に行く。

今は6年生4月、卒業式まであと1年。


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