木枯し紋次郎と越前・三国 | ヒナタカコ スタッフブログ ~山ほととぎすのさえずり~

ヒナタカコ スタッフブログ ~山ほととぎすのさえずり~

ピアノ弾き歌いシンガーソングライター、ヒナタカコのスタッフブログ

先ほど情報掲載した、今年11月8日(日)の坂井市環境推進大会ですが、ヒナタカコさんは、中村敦夫さんと一緒にこの大会に出演参加することになりました。

基調講演候補者として中村敦夫さんのお名前があがっていることを知り、主催者側の方に、中村敦夫さんと、福井県坂井市三国町(ヒナタカコさんの出身地)との関係について、参考として資料をお送りいたしました。私が2002年後半から2003年春にかけてあるところで依頼を受けて、ほぼ毎週、「福井に関するコラム」を継続的に発表していて、その第9話で触れていたことを思い出したからです。以下が、その時のコラムです。

 ==========================

 「越の原郷 ~時代性を持つ地方・周縁の土壌~」
   歴史とアジアから新しい時代の「福井」を描く
     
      第9話: 九頭竜川に折鶴を散らせない

語源が“たむけ”(手向)であった「峠」について前回で触れたが、福井には木の芽峠や栃の木峠など数多くの峠が県境や県内各地にある。福井の「峠」については別の機会に述べるとして、「峠」といえば中里介山の長編時代小説「大菩薩峠」が最高傑作だと思うが、私の年代だと峠がテーマであった「木枯し紋次郎」も忘れられない。「あっしにはかかわりのねえことでござんす」のセリフと口にくわえた5寸もの長い楊枝で一世を風靡したニヒルな無宿渡世人で旅から旅へと人生の裏街道を歩く股旅物だ。推理、時代、風俗小説と幅広く活躍されるも今年(2002年)10月病気で亡くなられた作家・笹沢佐保 氏が生み出した時代劇ヒーローだった。

小説のシリーズは1971年に始まり、中村敦夫 氏主演のテレビドラマ「木枯し紋次郎」は、フジテレビ系列(福井テレビ)にて翌1972年元旦から毎週土曜の夜10時半から一話完結の連続ものとして始まった。その後も「続」「新」とTVドラマシリーズは続いた。木枯し紋次郎の生国は上州新田郡三日月村。三日月村は架空の土地ではあるものの群馬県新田郡藪塚本町が「木枯し紋次郎の里」と名乗りをあげている。この町の南隣は、福井と深い関係にある新田義貞ゆかりの地・新田郡新田町で、薮塚本町にある温泉も新田義貞の湯治場の一つと言われている。

木枯し紋次郎は、東国の街道・峠道をよく歩いていたイメージがあるが、実は福井にも現れている。1973年2月放映の『続・木枯し紋次郎』第12話は福井が舞台だ。タイトルは「九頭竜川に折鶴は散った」。越前・三国の女郎屋にいる「お春」という娘を請け出して欲しいと頼まれ美濃から越前に入り九頭竜川に沿って三国を目指す紋次郎の前に、秘密の銀の採掘場を仕切る盗賊集団が立ちはだかる。折鶴が好きだった娘「お春」や娘を好いた若者は悪党達に殺されてしまう哀しい話だが、美濃(岐阜県)から油坂峠を越え大野を通る美濃街道、銅、鉛、銀などを産出した和泉村の面谷鉱山、大野藩・勝山藩の城下、九頭龍川の水運、賑わう三国湊と、江戸期の福井に思いを馳せることができる。

木枯し紋次郎を演じ一躍大スターになった中村敦夫氏は、俳優から作家、ニュースキャスターと幅広く活躍し、現在は政治家(参議院議員)でみどりの会議代表を務めている。「公共事業チェック議員の会」会長でもあり、癒着腐敗、利権政治,ムダな公共事業を斬ることに精力的な活動を行なっている。尚、中村敦夫公式サイトには「全国悪行地図」という特集コーナーがあり、現在全国51の悪行と思われる公共事業がリストアップされている。福井はこのうち「もんじゅ」高速増殖炉、福井空港拡張計画、中池見湿地LNG基地と3つの計画が挙げられている。中村敦夫氏は今年(2002年)8月には福井県を訪れ敦賀市の最終ゴミ処分場や高速増殖炉「もんじゅ」視察を行い講演活動も行なった。

政治・行政の腐敗に限らず、権力・金力・腕力に驕り傍若無人に力を振い暴れまくるものへの憤りと、その「悪」をたたき斬って欲しいという願いが、多くの人の心にあるはずだ。つつましい幸せを望む無辜の民が、私欲や一部の「組織」益の為に「暴力」をかざす者によって虫けらのように扱われ散り捨てられるのは許せない。ただ「悪」が「内部」「非公開」に守られ明るみにでにくい不透明性、事柄が複雑で理解に高度な専門知識が必要の上情報が錯綜し何が「悪」かの判断の困難さ、不条理で度を越えた既得権限を守ろうとする抵抗の強さ、目の前の安定を求め「力」に擦寄ってしまう弱さ、「暴力」がより直接的に自分に及ぶ恐れからくる見過ごしなどの諸要因で、社会の「悪」事がなかなか無くならない。

テレビドラマの世界でも、木枯し紋次郎はせっかく福井に来たと思ったのに、翌週には野州鹿沼宿から日光裏街道の足尾まで抜ける険阻な間道に姿を現すというように栃木県に移動してしまっている。木枯し紋次郎は、ずっと福井に留まったり度々福井に来て、悪を斬ってくれるわけではない。上述の難しさはありつつも、自分たちの地域は、自分たちで「悪行」と向き合い良くして行くしかないだろう。「お春」のような純朴な娘を福井で辛く不幸な目にあわせてはいけない。

===========================

中村敦夫さん演じる木枯し紋次郎は、とても格好良かったですし、私は「木枯らし紋次郎」だけでなく、笹沢左保作品は、大好きで愛読していました。

木枯し紋次郎