ここは、大阪。
吉本新喜劇や有名なグリコの看板、おいしいお好みにたこ焼き、串カツもある。
山本彩はそんな地元、難波が大好きだ。
にぎやかな市街を自転車で抜けて5分。
そこに山本たちが通う難波高校がある。
「ふああ…数学はやっぱやる気出えへんわ、部活前にちょっと寝るかー」
そう言いながら学校の屋上の芝生の上にねそべる。今日はとてもいい天気。昼寝にはもってこいだ。私は、重くなりつつある瞼をとじ、おやすみモードへと切り替えたが、
「山本!!なにしとんねん!さっさと授業に戻れ!!」
ウトウトしかけていると後ろから担任の声がきこえた。
「やば…先生だ! 」
びっくりして目を開けるとそこには、にたーっといやらしい笑みを浮かべた幼なじみの「みるきー」こと渡辺美優紀が立っていた。
「どう?うち先生の声真似。上手いやろ~」
「なんや、みるきーか…。びっくりさせんな、アホ!おかげで寿命縮まったわ!」
私はホッと胸をなでおろした。
「でも、さぼるさやかちゃんが悪いんやで~」
そう言って、隣に腰掛けた。……かと思いきや私と同じく寝そべった。
「なんであんたまでサボろうとしてんねん!」
芝生に横になり、お昼寝モードに入ったみるきーにツッコミをいれてしまった。
「ええやん、ええやん。うちも数学嫌いやしー」
私と美優紀は幼稚園からの幼なじみであり、小中学と一緒にバスケ部に所属していた。
体力こそ自分より劣るが、ロングシュートを的確に決め、敵を華麗なドリブルで抜いてしまう彼女は、チームの絶対的エースであった。
私はそんな美優紀に早く追いつき、追い越したいと思っていた。
しかし中学の最後の大会で美優紀は大怪我をしてしまった。
病院で医者にみてもらったところ、日常生活には支障はでないがまたスポーツができるくらいまで完全に治るには約三年間もの月日がかかり、その間はバスケができないと彼女は言っていた。
「私はもうバスケはできないし、やらないかな…」
大会の翌日、そのように美優紀は私にそう告げた。
その姿はとても寂しく、苦しそうでもあった。
しかし、彼女は「さやかちゃんと同じ高校でバスケ部のマネージャーになるわ。それでさやかちゃんに私のテクニックたくさん教えたるで〜」と言って同じ高校に入学。私が所属するバスケ部のマネージャーになった。
美優紀は雑用だけでなく、時には動画を撮影し技術面や戦術のアドバイスをしたりとマネージメントの面からチームを支え、チームの皆からも信頼されていた。
私は献身的にチームを支えてくれる渡辺に感謝していると同時に、心の片隅にもう一度、共にプレーしたいという思いがあった。
「みるきーとプレーしたいなぁ…。」
思わず口に出てしまっていた。
「何?さやかちゃん」
美優紀は私の声が聞こえてなかったのか、人懐こい笑顔で聞いた。
「いや……なんでもない。」
バスケができなくなって一番辛いのは美優紀のはずだ。
それなのに、こうして私たちの事を全力でサポートしてくれている。きっと何度も「自分だったらもっとプレーできていた!」と歯痒い思いもしているだろう。それを自分がまた一緒にプレーしたいなどというのは、バスケができなくなった彼女への冒涜でしかない。
「総体もうすぐやね、さやかちゃん!調子はどうなん?」
「まあ、ぼちぼちかな。」
私はさっきまで、自分が考えていたことを隠すかのようにぶっきらぼうに答えた。
「ぼちぼちって何なんよ?バッチリじゃないとあかんよ!」
美優紀そういって山本の背中をたたいた。長い髪が風になびく。
もうすぐ三年生の引退試合である総体がある。
難波高校のバスケ部は、
三年生で部長である山田菜々。
ニ年生が私、上西恵、小笠原茉由、小谷里歩。マネージャーの美優紀。
一年生が薮下柊、木下百花 の計7人で活動している。
しかし、三年である山田は高校からバスケを始めたため、小学や中学からバスケをしている他の後輩より経験値が劣っていた。そのためチームの中心となるのは経験者である二年生となっていた。
中でも体力が人一倍あり、素早いドリブルを武器とする山本は難波高校のエースであった。
それから美優紀とたわいのない話をしてるとチャイムがなった。
「お、チャイムなったな。後はホームルームして部活やな。いくでみるきー」
「待ってさやかちゃ~ん」
私の後を美優紀が慌てて追いかけた。