ケーキ屋は家から少し離れていた。車で5分くらいの距離だ。子供の足だと20分はかかる。
とにかく店へと急いだ……。
信号機以外はほとんど守らなかった。
交通違反ばかりの運転だ。
とにかく早く会って、ひなたに謝りたかった。
大型スーパーの近くに、ある小さなケーキ屋。
すごく古い建物で少し汚い感じがするが。ケーキ自体はすごく美味しい。
以前ひなたも連れていったことがある。
美味しい美味しいと、すごく喜んでくれた。
僕の生まれる前からあるそのケーキ屋さんは地元では人気だった。
店に着いた時には、すでにケーキ屋は、閉店していた。電気も消え、さっきまで営業していた感じには見えないくらいの静けさが辺りを包んでいた。
大型スーパーの近くなので、たくさんの人たちがいる。
行き交う人々を通り抜けありとあらゆる所を探した。
ひなたが歩きそうな所とか、花が好きだから花屋とか、色々……思いつくところは探した。
ひなたを探しだして20分くらいが経っていた。ずっと走っていたせいか呼吸が乱れ、汗をかいていた。
広い交差点の横断歩道にさしかかった。端と端から20メートルくらいある。
横断歩道の信号は赤。
たくさんの人たちが信号待ちをしている。色々な会話が飛び交っているこの場所で何も聞こえていないのは僕だけのようだ。
青になるまでの時間がすごく長く感じた。
〈ひなた?…………。〉
横断歩道の向こうから彼女が歩いてきている。小さな手で大きなケーキの箱をもち、こっちに歩いてきている。
すぐに、ひなたの所に駆け寄った。
〈ひなた……。ごめんな。遅くなってしまって。〉
《ううん。いいんだよ。ケーキ屋さん閉まっちゃたらパーティーできないでしょ?約束破るの、おじちゃん嫌いなの知ってるから。…………。だから代わりに私が取りにいってあげたんだよ。》
〈ひなた…………ありがとうね。……はやく帰ってパーティーしよう。〉
《うん♪おじちゃんありがとうね。大好きだよ》
ひなたは僕の後ろに、僕はひなたの前に、二人で手をつなぎ歩いた。
いつまでも、こうして家族のように、仲良く永遠にそばにいたいと思った……。