エピローグ 桜SARARI | ★きゅん。のブログ★

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エピローグ


-14年後-


2005.04/14 成田第二ターミナル


[お知らせいたします。エア・カナダ 3便はただ今25分遅れで到着いたしました。]


人ごみで賑わう空港ロビーにアナウンスが響き渡る。


電光掲示板が点滅して、到着済み にかわった。


平日にもかかわらず人ごみで賑わうロビーの片隅。


行き交う人の波を見つめながら、わたしはその人を待っていた。


「・・・・。」


片手に持っていた携帯電話をパタンと閉めると、バックを持って立ち上がる。


ゆっくりと到着ゲートへ向かいながらわたしはあの頃のことを思い出していた。


あのさくらの季節からずいぶん長い時間が流れて、わたしたちは大人になった。


めぐる季節の中でわたしたちは迷い、戸惑いながら、お互い別々の生き方を選んで


彼はカナダへ、そしてわたしは彼についていく勇気もなく日本に残った。


今でも一人手を振りながら去っていく後姿をわたしははっきりと思い出す。


最後に彼に会ったのは、彼が一時帰国した5年前。


たった7日間だったけど、懐かしい笑顔に心が揺れた夏の日。


お互いの胸に想いを閉じ込めたまま またわたしたちは離れた・・・

時折届くメールに彼が元気で頑張っていることを知っていたのだが・・・

ひとしきり強い南風が吹いた3月の午後

新着メール 1件

「?」

ふいに彼から届いたメールには一時帰国の文字と短い言葉で

「会えたらいいな。」

と書かれていた。

わたしは思わず何度もそれを読み返した。

「・・・成瀬さんが・・帰ってくる?」

そして・・・今日。
[D 51 ゲート]


人影まばらなゲートに着くとわたしは軽く深呼吸する。


5年・・・あっという間だったような・・すごく長かったような。


わたしはあの頃とくらべて少しは大人になったのだろうか。


彼は、どう変わったのだろうか。


唯一あの頃とはっきり違うのは、


・・・・わたしはもう一人ではなく、彼もまた一人ではないって事・・。


「・・。」


わたしはバックから携帯を取り出すとゆっくりとそれをひらいて


フォトフォルダを開いた。


あどけない笑顔でこちらに向かって笑う小さな笑顔と


その横に並ぶそっくりなもうひとつの笑顔。


朝、空港へ出かけるわたしを玄関まで追ってきて


「おかぁさん。どこに行くの?」


と彼女はわたしにしがみついて心配そうに言った。


わたしは彼女の手をそっととってしゃがみこむと彼女に向かって微笑んだ。


「お友達に・・会いに行くんだよ。」


彼女はきょとんとしてわたしを見つめる。


「おともだちぃ??」


わたしは彼女のやわらかい髪をなでながら


「そう。お母さんのね大事なお友達なの・・。」


「ふぅん・・・。」


そういう彼女をふいに後ろから誰かがひょいっと抱き上げる。


「ほら、お母さん出かけられないだろ?今日はお父さんとお留守番。」


そう言って抱き上げるとわたしに向かって微笑んで


「久しぶりなんだろ?ゆっくりしてこいよ。」


とその人は優しく笑うと、わたしを送り出してくれた。


そう・・・もうあの頃とは・・違う。


わたしには大切な家族ができていた。


普通なら、昔の彼氏なんかに会いにいくなんていったら、きっと許されなかっただろう。


でも彼はすべてわかった上で送り出してくれた。


わたしは心の中で、彼に感謝していた。


「・・・。」


ゆっくりと携帯を閉じるとわたしは顔を上げる。


あたりがざわめき出して、ゲート周辺が騒がしくなってきた。


とくん・・・・と胸がなり始める。


懐かしい友人に会うような、不思議な感覚。


やがてゲートの奥に、人影が見えてきた。荷物をチェックしてこちらへ向かって


ぞろぞろと歩いてくる人たちの中にわたしはその人を探していた。


出迎えの人が増えてきて、わたしはゲートを背伸びをして覗き込みながら


出てくる人たちを見つめる。


・・・まだ彼の姿はない。


わたしはもう一度背伸びをすると奥を覗き込んだ。


その時。


「・・・・ぁ。」


次々と出てくる人たちにまぎれて、見覚えのある歩き方が目に入った。


少し疲れたような顔で荷物を抱えながら、こちらへ歩いてくる。

「・・・成瀬さん。」



相変わらずの茶色い髪が揺れていた。


懐かしさがこみ上げてくる。

・・そうだ。びっくりさせてやろう。



わたしは片手に持った携帯をぎゅっと握り締めた。


急いで人ごみから抜け出すと、少し離れたところで彼を待つ。


「・・・!」


おもむろにわたしは携帯を開くと、アドレス帳を呼び出した。


ピッ。とある名前を探して通話ボタンに指をかける。

「ちゃんとでてよぉ。成瀬さん。」



やがて彼が、腕時計を見ながらゲートを出てくるのがわかった。


きょろきょろとあたりを見回しながら歩いている。


くすっとわたしは笑うと通話ボタンを押した。


ピッ。と音がしてプップッ・・・・と電子音がすると呼び出し始める。


♪♪♪


彼の携帯が音を立てて鳴り出した。


わたしは軽く携帯を耳に当てながらそれをうかがう。


「??」


着いたとたん鳴った携帯に驚いて、彼は荷物を置くと、あわてたように


スーツを探って携帯電話を取り出した。


プッ・・と音がして懐かしい声が聞こえてくる。


「はい?成瀬です。」


「・・・・w」


声もあの時のまま。かわってない。


「もしもし??」


そういう成瀬さんに向かってわたしはそのまま歩き出した。


走り出したい気持ちを抑えてゆっくりと近づく。


「・・おかえり!」


そう言うわたしに、びっくりしたような声で成瀬さんが答える。


「亜紀・・か??」


「変わってないね。その声。」


「・・お前今。どこ!?」


あたりを見回しながら歩いて、わたしを探す成瀬さん。


携帯を片手に眉を寄せながらわたしとは違う方向へ歩いていく。


・・・目が悪いのも変わってないね。


・・コンタクトすればいいのに。


そういいながら後ろから成瀬さんに近づいた。


「さぁてどこでしょう。」


「どこって・・わかんねぇよ。」


そういう成瀬さんの後ろでわたしは足をとめた。


「こ・こ!」


耳元から聞こえる声が、同時に後ろから聞こえてきて、成瀬さんは


驚いて振り返った。


「・・・おかえり。成瀬さん。」


携帯をゆっくり耳から離すとわたしは笑った。


「・・・・。」


成瀬さんはしばらくわたしを見つめるとゆっくりと携帯を持った手を下に下ろした。


やがていつものようないたずらっぽい表情になると、くすっと笑って


「・・・かわんねぇな。お前。」


とあの頃のままの笑顔で笑った。


わたしはそんな成瀬さんを見て、また笑い返す。


成瀬さんが懐かしそうな瞳でわたしに言った。


「また、会えたな。」


「・・・・うん!」


そういうとわたしは成瀬さんを見つめ返す。


もう、あの頃のわたしたちはどこにもいない。


元に戻ることもない。


だけど、同じ時間をすごしたあの季節は、いつまでも心の中に残っている。


・・・さて、なにから話そうかな。


どんな話してくれるのかな?


そんなことを思いながら。


黙って微笑む彼の顔を見上げると、わたしはパタンと携帯を閉じた。


-END-