中2の科学と妹の心臓(13歳7ヶ月) | 日々是成長☆フォンタン娘と甘ったれ兄さん☆

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重症先天性心疾患(純型肺動脈閉鎖症)でフォンタン術後11年目、運動制限ありまくりな小学生の娘と、マザコン気味で甘ったれな高校生の息子。そんな兄妹の日々の記録☆

<2021/09/17 fri ☁☔>


進研ゼミのタブレット学習をしてる息子の後ろをたまたま通りかかったとき、たまたま画面を覗き込んだ。


するとまさに今、心臓の勉強をしてるところだった。


中2の科学の『動物のからだのしくみとはたらき』という単元の『呼吸のはたらき』『血液のはたらき』など。


その中でもまさに『動脈』『静脈』『動脈血』『静脈血』で大混乱中。


見てしまったら黙っちゃられないぜ、重症心疾患児の母。


熱血講義を開始。


「肺で酸素を取り込んで、絵的に赤い血液になったのが『動脈血』だってのはわかる?『動脈血』『静脈血』ってのは血液の名前ね。肺で酸素を取り込んだ血液が『動脈血』。逆に全身に酸素を運んで絵的に青くなった血液が『静脈血』。血液の名前は肺か全身を挟んで変わるの。『動脈』『静脈』は血管、すなわち血液が流れる通路の名前。これは心臓を挟んで変わる。血液が心臓から出ていく血管が「動脈」、逆に心臓に入る血管が「静脈」。ここまでOK?」


「問題はここ。心臓と肺の間の血管と血液。全身から戻ってきた青い『静脈血』は心臓に入って『右心房』に貯められて、『右心室』のポンプに押し出されて肺に流れる。この血管は心臓から出てるから『動脈』だけど、血液は肺を通ってないから青い『静脈血』のまんま。肺で酸素を取り込んだ赤い『動脈血』は心臓に戻って『左心房』に貯められて『左心室』のポンプを使って全身に流れてく。酸素を取り込んだから赤い『動脈血』だけど、心臓に戻る血管だから『静脈』。体の中でここだけが例外。『動脈』と『静脈』の違いと、『動脈血』と『静脈血』の違いがわかれば理解できると思うんだけど」


おつむのよろしくない息子は大混乱。


何度も何度も説明して何となく理解はできたのか?


流れで娘ちゃんの心臓の説明も。


娘ちゃんは『純型肺動脈閉鎖』で『フォンタン手術済み』です。


「娘ちゃんはここの『肺動脈弁』が塞がってるのね。『弁』はわかる?まあ、要するにドアだね。血液が逆流しないようになってる。娘ちゃんは『肺動脈弁』が完全に塞がってて、ここ『右心室』が小さくてポンプの役割を果たさなくて、ついでにここ『三尖弁』も小さいから『右心室』全体が使えない。じゃあどうなってるかというと、『静脈』と『肺動脈』を人工血管で直接繋いで心臓を通さずにまっすぐ肺に『静脈血』を流してる」


ちなみに数字の「8」の真ん中に心臓を置いて、てっぺんに肺、底が全身というような図になっていたので、全身からの静脈と肺動脈を繋ぐ線を引いて説明した。


正確には大静脈で、さらに正確には上下があるけど、そこまではまだのようだったのでスルー。


勢いに乗ってさらに突っ込んでいく重症心疾患児母。


「本来なら心臓というポンプが必要なのに、ポンプなしでどうやって流れてると思う?血管はホースとおんなじ。流れやすければ流れる。ホースの中が細くなってたり汚くなってたりしないで、出口側が塞がってたり狭くなってたりしなければ流れる。ポンプがあれば多少流れにくくても押し通せるけど、ポンプがないから流れやすさが重要。まあ他に重力とか筋肉とかも関係してるけど、そこまでは別にいいや。この場合の出口は肺のこと。肺の状態が良いことがものすごく重要。娘ちゃんは心臓病だけど、肺と心臓はセットで循環器だからね」


この辺まではこれまでにも学校で体の仕組みを習う度に説明してきた。


息子が覚えてるかどうかは別問題だけど。


コロナ禍の今はこの流れまで来たら当然コロナもぶっ込む。


「コロナの一番の症状は肺炎でしょ。肺炎はその名の通り肺が悪くなること。肺は一つの大きな風船に見せて、本当は大きな風船の中にある小さな風船の集まりで、肺炎はその小さな風船が炎症を起こして酸素が取り込めなくなってる状態。酸素が取り込めないから空気を吸っても吸っても苦しくなるし、酸素不足で全身に影響が出る。さっき行ったけどポンプのない娘ちゃんの心臓で静脈血を流すには何が大事だった?そう、流れやすさね。肺が悪くなってるとホースの先が潰れてる状態になって血液が流れなくなる。心臓が正常な人なら右心室のポンプで押し通せるけど、ポンプのない娘ちゃんは肺の状態が悪くなると静脈血が流れなくなるんだよ」


ここまで聞いて息子は事の重大さを理解したのか顔面蒼白。


母はさらに追い込む。


「肺炎治療には人工呼吸器を使うって散々ニュースで聞いてるでしょ。人工呼吸器ってのは空気を取り込めなくなった肺に空気を送り込む機械なのね。本来肺は肺の圧力を下げることで空気を吸い込むのが基本の呼吸で、肺の圧力が下がるからポンプがなくても血液は流れる。人工呼吸器は逆で空気を機械で送り込むから肺の圧力は上がる。肺の圧力が上がったらポンプで押し出してない血液はどうなる?流れなくなるよね。娘ちゃんがコロナに掛かって肺炎になってその治療をするってことは、正常な人が人工呼吸器を使うのと違って、人工呼吸器そのものが血液の流れを妨げることになる」


「治ってからもずっと息苦しい後遺症の人もいるってニュースで見たでしょ。ずっと息苦しいってことはずっと血液の流れも悪い状態ってことだし、ずっと酸素不足だから少しでも多く酸素を取り込もうとして呼吸も速くなるし心臓も速くなる。ずっと運動したあとの状態が続くことになる。普通にしてても走るの禁止な娘ちゃんがそんな状態になったら心臓はどうなっちゃうのか考えるだけで恐ろしいわ」


娘ちゃんが走るの禁止なのはフォンタンのせいではなく重度の類洞交通のせいだけど、そこはスルーで。


追い込みすぎて息子固まる。


まだ中2の息子をここまで追い込むのには理由がある。


市内でも中学生のワクチン接種が始まり、息子のクラスにもちらほらと1回目を終えた子が出てきた。


我が家も予約済み。


となると心配なのがワクチンを接種したことで油断して調子に乗る子が出てくること。


反抗期真っ只中の中学生。


2回目まで接種したら絶対にマスクを外す奴が出てくる。


正直世間の大多数の人々の危機意識は重病児家族のものとは比べ物にならないので、きっと親にもそう考える人が出てくる。


ワクチン接種したって感染しなくなるわけじゃなく、感染しても重症化しにくくなるであろうというものなんだから、娘ちゃんにとっての脅威はなくならない。


普通の人々の危機意識を重病児家庭と同じにしろってのは無理な話なので、結局のところ自衛するしかない。


なので息子には、ワクチンを打って周りがマスクを外し始めても息子にはコロナが終息するまではマスクをし続けてもらうことになる、という話をつい最近したばかり。


本当にたまたまだけどタイムリーにその裏付け説明をできたことになる。


息子は「わかった。どうしてコロナになったらヤバイのか理解したわ。これからもしっかり気を付ける」と神妙な顔で頷いてくれた。


ついでに娘ちゃんを見て「お前、すげえな」と。


娘ちゃんの心臓の説明を聞くたびに毎回言ってるわ。


娘ちゃんの心臓の詳細を息子が覚えておく必要はないけど、このときの気持ちだけは忘れずに覚えていてほしいなと思う。


今回は完全に中2の息子向けに解説したので娘ちゃんは理解しきれてないけど、兄に褒められて照れていた。


っていうか、ここまでの解説を中学生みんなにしたいくらいだわ。