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【★サイドストーリー★トギの初恋】
チャンビンは、ウンスとトギが通う高校の1年先輩であった。生物部の部長であり、当時から女子に人気があった。
高校の合格発表をウンスと一緒に見に行った帰り、女子に囲まれているたチャンビンを見かけた。長身で白衣を纏い、その時は教師か学生か分からなかった。トギは一瞬で心を奪われてしまった。
入学後、チャンビンが学生で生物部所属ということが分かった。トギは、科学部に入りたいというウンスを強引に誘って、何とか生物部に一緒に入部した。なぜかチャンビンはいつもそれが当たり前のようにウンスの隣にいた。
トギが高1の夏休みのことであった。
部室で居眠りをしているウンスを見かけた。
少しずつ近づくと、チャンビンの存在に気づいた。大きな柱に隠れて様子を伺うと、眠っているウンスの髪の毛に触れて、優しそうな目でウンスを見ているチャンビンの姿を見てしまったのだ。トギはキュッーと胸が締め付けられる思いがした。
ウンスのことが好きなんだわ。
ウンスがチャンビン先輩を好きになってしまったら、恋人同士になってしまう。
恋に晩稲なトギは、チャンビンが初恋だった。
ウンスを好きな人が自分の初恋の相手なんて、ウンスにだけは知られたくなかった。
それから一週間、ウンスと喋ることが出来なくなっていた。チャンビンに目を合わせることも出来ずにいた。
部活を休み、誰にも気付かれないために逃げる道を選んだ。
それからだいぶ経ったある日、ウンスにチャンビン先輩のことをどう思うか聞いたことがあった。
「良い先輩だと思うわ、何でも話せるお兄ちゃんみたいな人かな。彼氏にしたいとは考えたこともない」
とアッサリ言われた。
ウンスの気持ちは分かっても、チャンビン先輩の気持ちは分からない。
ウンスをひたすら思い続けているのであろうか?毎日不安な気持ちで入る部室。
チャンビン先輩がいつも座る席にいてくれればホッとする、目でウンスを探しているチャンビン先輩なんて見たくもない。
チャンビン先輩にはなかなか渡せなかったバレンタインデーのチョコ。言葉通り、ウンスはチャンビン先輩にチョコレートやプレゼントをしたことがなかった。
ウンスは流行っていた義理チョコすら、誰にもあげなかった。
「私はね、この人って決めたら一途なの。そんな出会いがしたいな。チョコレートは運命の人にどっさりあげたいわ」と笑っていた。
ウンスの髪の毛に触れていたあの夏休みから半年以上経った。
その日はバレンタインデーだった。
勇気を出して、チャンビン先輩にバレンタインデーに手作りのチョコレートをプレゼントしようと思った。
本命が義理と思われてもいい。生まれて初めて本命の人にチョコをプレゼントしてみたいと思った。
チョコと一緒に渡すものをあれこれ悩んだ。
手編みや手作りなんて重いだろうな。
じゃ、チョコの手作りも重い?
男の人って、どんなものをプレゼントされて喜ぶんだろうと迷いに迷った。
そうだ、チャンビン先輩はお茶が好きだと言っていたわ、
心を穏やかにするオンガム茶を探して、それを箱にいれて自分でラッピングをした。
ついに、その日がやってきた。
チャンビン先輩は、照れくさそうな顔をして受け取ってくれた。
私の心も受け取って欲しい、言えない自分がいた。
それが気にいってくれたらしく、会話が少しずつ増えていった。
医学部志望であるのに、薬のことが詳しかった。特に漢方のことは良く知っていた。
チャン先輩が高麗総合大学を志望していると聞いた時、私は迷わず薬学部に行こうと決めた。
少しでも側にいたかった。
大学に入ってから、ビン先輩との距離は少しずつ近くなっていった。
学食、図書館、書店、駅、良く遭遇するようになった。
会話も更に増えていった、ウンスが居なくてもふたりだけの会話が続くようになった。
そうしていくうちに、図書館で調べものが終わったりした後、一緒に帰る機会も増えて行った。
そういう関係が3年ちょっと続いた。
数ケ月前にやっと、ドライブに誘ってもらえるようになった。
ファーストキスは、観覧車の中だった。
これで、やっとビン先輩は私に振り向いてくれると思った。
出会いからファーストキスまで、6年以上も掛かってしまった。
ウンスにこの初恋がバレたら、笑われてしまうのだろうか?
私は、ビン先輩から、まだウンスのように髪を触れられたことはない。
ウンスにしたように、髪に触れ、嬉しそうな目で私だけを見て欲しい。
トギは思っていた。