【恋は突然始まった13 歓迎】

 

門の扉が開き、玄関アプローチまで、手を離さず歩くふたり。番犬のチュホンがワンワンと鳴き

歓迎をする。機嫌の良いヨンは、チュホンの首や肩の回りを撫でてやった。

チュホンはウンスを見て、照れたような甘え方をしてきた。

チュホン、お前も男だからな。

その気持ちは分からなくもない。

ただし、ウンスはダメだ。色目を使うな。

ヨンはチュホンにそっと心の中で語りかけた。

 

玄関のエントランスに入ると

使用人頭のミタ、後ろから、ミタゾノ、サク、アキコが出て来た。

 

「ヨン様、お帰りなさいませ」

「あっ、腹が減った、何か食べさせて欲しい」

「承知しました。今すぐご用意致します」

「姉貴はいるのか?」

「ウンビョルお嬢様と食堂でございます」

ミタはヨンに応えた。

 

 

「ウンスさん、食堂でいいのですか?」

「えっ、何で?」

「うるさいのが二人待っていると思います」

「行きたいわ」

「分かりました」

ヨンはウンスの手を握り、自分の身に引き寄せた。

 

食堂に入ると、そこには最悪の人が待っていた。

 

「ヨンァ、お帰り」

右手を上げて座った叔母上が目に入った。

「ヨン、良かったわね。上手く行ったみたいじゃない」

姉貴はからかうような目で俺を見て来た。

 

「ヨン、ウンチュとおててつないでいる。らぶらぶ」

ウンビョルまでからかいやがって。

「ウンビョル、ウンチュではない。ウンスさんだ。

失礼だぞ」

 

「あっ、いいのよ。

はい、ウンビョルちゃん、ヨンヨンよ」

ウンスが車に忘れてあった縫いぐるみを

手渡すと、

 

「ウンチュ、いつもここにいてね。

ウンビョル、うれしい」

ウンスは、びっくりした顔でヨンを見上げた。

 

「ウンスさんと仰いましたか?

初めまして、チェミギョンと申します。

こやつの叔母でこざいます」

「はじめまして、ユウンスと申します。

ウンスと呼んでください」

「もう、呼んでおるわ」

高らかな笑いをしてきた。

「ウンスさん、朝から何も食べていないん

じゃないの?ミタ、ミタ…」

「何でしょうか奥様」

「もうたくさんお持ちして、ワインも倉庫から出して来てね」

機嫌が絶好調の姉貴は、ミタに言った。

 

 

「ウンスさん、こやつは初めて女の子を家に連れて来たのがウンスさんです。多分、誰とも付き合ったことがないのだろう?と思います。見合い話があっても、『俺には運命の人が待っているから』と言う、おかしな子でありました」

叔母上が真剣に話す。

 

「それがさ、深夜に女の子を抱き抱えて帰って来るんだもん。びっくりしちゃったわ」

姉貴が笑いを堪えて話しやがる。

「見ていたのか?」

「当たり前でしょ、こんな歴史的瞬間に立ち会えてよかったわ」

「やめろ、ウンスさんが恥ずかしがっているだろう」

「ウンチュ、おかおがあかくなっているよ」

ウンビョルまで言ってきた。

 

「ウンスさん、迎え酒を一緒に飲みましょう」

「姉貴やめてくれ」

「あら、うれしいのよ、ねぇ叔母様。ウンスさん、こっちへいらっしゃって。ヨンの顔を見ているだけで、嬉しくなっちゃうのよ」

姉貴はいつものように良く喋る。

 

姉弟のやりとりを聞いていて、

クスクスと笑うウンス

 

「ウンチュ、ヨンヨンかしてあげる」

ウンビョルがウンスに渡そうとすると、

 

「ウンビョル、いいのよ、ウンチュ先生は本物がいいみたい、うふふふ」

姉貴は面白可笑しく絡んできやがる。ウンビョルは意味が分からず、首を傾げる。

 

 

食堂で3時間が経過した。

「可愛い妹が出来て、とっても嬉しいわ。姉妹同士仲良くしましょ」

ジュニ姉貴がからかえば、

「あの~まだ、そう決まったわけじゃないですし」

と言いながら、隣のヨンの顔を覗いた。

「恋人の次は婚約者では嫌ですか?」

「あの、私まだ4年生なんです。あと2年も学生ですし、実習もあるし、卒業試験や、国家試験も通らないといけないんです。やることいっぱいあるんです」

「大変なときこそ支え合えばいいのです。俺はウンスさんを支える覚悟は出来ています」

「こんな男らしいヨンを見たのは初めてだわ」

姉貴はいつも横から口を挟んでくる。

「ヨンァは母親を幼い頃に亡くしているので、物を欲しがるようなことをしませんでした。唯一欲しがったものがウンスさんということに…」

叔母上が手酌をしながら、しんみり言う。

ウンスはだんだん視界がぼんやりしてきた。

ウンビョルはジュニの腕の中で熟睡している。

 

「朝一番にお父様のところへお見舞いに行ったのよ。ヨンが女の子を連れて来たって言ったらね、喜んでいたわよ」

姉貴が俺に報告をしてきやがった。

「余計なことをするな」

「あら、姉として当然のことよ」

 

                                                 -続-