【恋は突然始まった9 お持ち帰り?】
ウンスに帰られた後、ベットに横たわり考えていたヨン。
ウンスを抱き抱えて、酒の匂いはしたものの、どこか懐かしい匂いがした。
腕に残る抱き心地の良さが何とも言えなかった
米国のハイスクールの時、メビに襲われたそうになったことがあった。
まだ大人の女にもなっていないのに、キツめの香水をし、赤い口紅をし、黒い下着で迫って来る姿に吐き気さえした。
背伸びした女を演じるメビは、俺は大嫌いだった。
自分に無理をする女は嫌いだった。
俺の周りにいる女は、かなり怖い。
叔母上もそうだ、ジュニもそうだ。
まともなのはウンビョルだけか。
あれは、まだ女ではないか。
トントン、ドアの外でミタの声がする。
「なんだ?入ってくれ」
「ヨン様 こちらはお客様の忘れ物でございます」
と手渡したのは、女性用の腕時計だった。
日本のSEIKOのものだった。
「ヨン様、客室の洗面所に置いてありました」
「そうか、預かっておく、さがってくれ、少し休みたい」
「承知しました」
ミタは下がって行った。
その腕時計を見て、自分の腕につけようとした、
細い腕だな~。折れそうな腕だ。
鼻に近付けて嗅いでみた、何も匂いがしなかった。
あー、これで預かり品は2つになったか。
なかなか、返せないものだな。
取り敢えず、煩いふたりが戻る前にもう一度
寝ようと布団を被るヨンだった。
二日酔い、胸いっぱい
何で、私をお持ち帰りにしたの?
普通はホテル直行よね?
私に魅力ない?ねぇ、私に何をしたかったの?
あら、時計がないわ、あれは大学の入学祝いにアッパに買ってもらったのよ。
あれ、あのお屋敷にいた時、付けていたはずだわ。あ~どうしよう。
えっ、取りに戻る?うん、そうしよう。
家政婦のミタさんを呼べば大丈夫よね?
また、チェ家の屋敷に戻って来た。
大きなお屋敷、大きな門構え、どんな人達が住んでいるのだろう?
きょろきょろするのも疲れるわ
ピンポーン
指が震えたが目を瞑って押してみた。
「はい、恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「あの~先ほどまでお世話になった、ユウンスと申します。時計を忘れてしまって…」
「少々お待ちくださいませ。外は寒うございます。中に入られては如何でしょうか?」
「あっ、外で大丈夫です」
「それでは、少々お待ちくださいませ」
「ヨン様」
いきなり、上掛けを捲り、使用人頭のミタが声を掛けて来た。
「ノックの音が聞こえなかったようで、失礼ながら、こちらに参りました」
俺は幼き頃、母親を病で亡くしているので、ミタが母親代わりのようなものだった。
年のとった母親か。叔母上の方がまだ若い。
「何だ、寝かせてくれ」
「お客様がお見えでございます」
「客?仕事の客か?」
「いえ、女性でございます」
「叔母上か?」
「時計の持ち主様でございます」
「えっ、早くそれを先に言え」
髪は寝ぐせであったが、腕時計を持ち、慌てて躓きながら走っていた。
途中から、スリッパは両手に持っていたヨンだった。