泣きながらペンを走らせた
“殺人依頼書”にサインをした

入院した
外来で子宮口を開く
1回目の処置を受ける
痛みと共に始まった
別れのカウントダウン

「これからこの子の命を
わたしは奪うんだ」

思い知らされた

「今受けている痛み以上のものを
この子に…わたしは与えるんだ」

涙は止めどなく流れ
生理痛のような腰のダルさを
感じながら処置を終えた

病室に案内され処方薬を飲んで
しばらくしたら嘔吐した
それはその後受けた4回の処置の度
拒絶反応の様に
この子からの最後の訴えの様に
わたしの身に起きた

陣痛促進剤を2回打たれ
副作用で高熱と寒気に襲われていた
入院2日目の夕方、破水
流れ出た水と共に
わたしの中から“心”が流れ出た

手術室
陽葵はすでに産道に出て来ていた
脚の間に出てきた我が子が
触れる感触を感じた
一心同体だったわたしと陽葵は離れた
陽葵が部屋の脇に置かれ
すぐさま胎盤を取り出す準備がされた
差し込まれた器具が与える痛みに
身をよじるわたしを
看護師さんは二人がかりで押さえ込み
麻酔を左肩に打った
わたしは眠りに落ちた

事前の説明で2時間くらい
目が覚めないと思うと聞かされていた
でも30分ほどで目が覚め
しばらくして近くの病室に移された

母との対面
麻酔がまだ残った体は
ぼんやりとカーテンレールを見ていた
そこへ看護師さんに案内され
母が入ってきた
わたしの姿を見るやいなや
右手を握り泣きながら
「ごめんよ…ごめんよ…」
と繰り返した

わたしのお腹の中は
わたしの心と同じで
大きな空洞が出来た