落ち着いた後にまたきて、うっかり目から、零れた。
悲しいのはなんでだろう。
苦しいのはなんで。
落ち着くために泣いて、そして考える。
そうしてしまった彼の気持ち、理解できる。
黒えのぐの恐ろしい力も、よく知っている。
よく、考えて。もっと、考えて。
真面目なふりした遊びは怖い。
二人のふりした一人は怖い。
だけど彼は全てを話し、償いの言葉を口にした。
もしあの場で
ヒナに言われる覚えはないんだけど。
と言われていたら、多分、もう笑えなかった。
自分を責めていたじゃない。
ごめんねって言ってくれたじゃない。
下半身は軽くても、心は軽くない。あたしが見た彼の姿は何も変わってない。今でも彼は彼なんだと思った。今までの彼が幻だとは思わない。
そう言い切れるのはなんで?
勘。それだけだな。あたしがそう感じただけだ。
もうどうにでもなれってなる気持ちも、甘い蜜に手を伸ばす気持ちも、理解できるよ。あたしだって、暗い暗い過去をただ逃げてきたわけじゃない。裏切る心、欲望に負ける心、それがどんなものか、恨みながらも知ろうとしてきたんだよ。だから多分分かる。彼の立場に立てるだけの経験はある・・・と思う・・・きっと?
傷ついたときの整心術。それは想像力なんだと思う。
相手の立場に立ってみる。相手の目で世界を見てみる。そうしたらほら。その行動にあたしへの悪意はなかったことが見える。
あたしをあざ笑うための行為だった?
あんな女、バレたって適当に反省してればちょろいし、と
舐められていた?見下されていた?
ちがう。そんなものは見えない。
安易な正義感と優しさと、体の疼き。そこに悪意は見えない・・・。
もし、適当に謝ってなぁなぁにしてしまえという思いがあったなら気づけると思う。でも感じなかったから。
大事なのはどう転んだのかじゃない。どう立ち上がるのか、だから。
怒るものは怒るべき。そう思う。
だけど、ごめんなって姿勢が見えたから、
あたしはその心の方を信じる。
あたしの痛みも、分かってくれたのだと信じる。
だからもう、責める気になれなかった…。
まだ少し悲しいときもあるけど、大丈夫。振り幅はどんどん狭くなっている。
相手の立場にたって、相手の中に善意を見つけて、落ち着ける。
被害者意識にのまれて、責めることしかしない者に救いはないってさ。
人間性まで否定はしないもん。
現実は現実として、受け入れていかないとね。