私の働いていた病院での話
私の勤めていた病院では課長以下の役職は57歳を迎えると役職が取れ
「一般職員」へとなる規則がありました
定年は60歳なので、そのまま一般職員として病院に残るケースは多かったのですが・・・
今まで役職として勤めていた人。
戸惑うのは本人より周囲の職員でした・・・
今まで上司として
「●●師長」「●●主任」と呼んでいた人を、
次の日からいきなり名前で呼ぶのはちょっと抵抗感があるような
かといって「●●元・師長」と言うのも変だし・・・
そして、私にもついにそういう場面が訪れました。
異動でやってきた元・師長
私の病棟にMさんが異動で来ることになりました。
Mさんは私の以前の上司。
歳は10歳くらい上でしたが、背が高くスタイルが良い
年より若く見えるタイプ
しかも、キリっとした美人さん
しかし、自分にも他人にも厳しく、おかしいと思えば忖度なく先生にも意見する
常にスタッフを守る姿勢は、尊敬できる存在の上司でした
が、そんな性格からか
周囲からはちょっと一線を引かれるというか・・・
私も一緒に働いている時は仕事以外の話はほとんどしたことがない上司でした。
そんなM師長が一般職となり異動になってきたときは、同僚達も戸惑っていました
「ねえ、名前で呼んでいいのかな?いきなりは失礼かな?」
「元・師長ってのもおかしいし・・・師長って言うのも嫌味になるだろうし・・・」
一緒に働いたことの無い職員たちは噂で、
「怖い人」とイメージが出来上がっているようで、どう対応したらいいか迷っていました
そこで
「ひなちゃん、あんたの元上司でしょ。あんたから声かけてきてよ」
と、年配看護師
私も仕事以外話したことないんだけどな・・・
元・師長に話かける
とりあえず、挨拶しに近づくことに。
「あの、お久しぶりです。これからよろしくお願いします」
と私
私に気が付いたMさん
「あら、ひなたさん。あなたこの病棟だったの?」
相変わらず、ハキハキした口調のMさん
「はい、以前はいろいろご指導いただきお世話になりました」
と私
「何言ってるのよ。今度は私がいろいろ教えてもらう立場だからよろしくね!」
とMさん
笑顔で応えるMさんに
「あの・・・それで、ですね・・・」
と、言葉を選びながら話す私
「・・・?」
不思議そうな顔のMさん。
意外な反応
ちょっと言いにくいなと思いながらも
「あの、今度からMさんと下の名前で呼んでもいいですか?」
と、勇気を出して言ってみる
病棟内には苗字が同姓の人がいたので、あえて下の名前で呼ばせてもらえればと思って言いました。
ただでさえ苗字で呼ぶのもハードルが高いなと思っていたのにいきなり下の名前なんて、馴れ馴れしいかな?
そう思って伝えた瞬間
Mさんの顔はみるみる真っ赤になり・・・
その意外な反応に驚く私
Mさんが怒っている表情ではなく、戸惑っているような、恥ずかしそうな初めて見る表情。
「え?もしかして照れている?」
本当はフレンドリーな人
そう思った瞬間、Mさんはいきなり私の肩や背中をたたき始め
「もう~!やだ~!そんなこと良いに決まってるじゃない」
と言いながら何度も照れ笑いをしながら私をたたきました
そして
「私もひなちゃんって呼ばせてもらうわ~」
と、嬉しそうにMさん
考えてみれば以前から肩に手を置いたりなどスキンシップが好きな人だったなと思い出しました。
もともとは気さくで、寂しがりな面をもっていたMさん
「師長」という肩書のせいで一線を置かれて寂しかったのかもしれません。
一般職になって、同僚と対等に付き合えるようになったMさんは生き生きしてました
そんなMさん。
周囲も打ち解けるのが早く、すっかり馴染んでいました
それ以後は私も気軽に世間話をしたり、プライベートな相談を聞いてもらったりと親しくさせてもらいました。
もう少し早く、同僚として働いてみたかったです