以前働いていた病院での話。
何を言ってもやっても許される不思議な魅力を持つ
「人たらし」の人っていますね。
私が出会った介護さんもその一人でした。
後にも先にもあれ以上の「人たらし」の人間は見たことがありませんが・・・
介護さんは当時22歳の男性。
身長は高く、すらりとした体型。
顔立ちは、田舎ではあか抜けている、
いわゆるアイドル系。
いつも笑っているような顔立ちでしたが、それが嫌味が無い自然な笑顔。
あか抜けているのは、東京生まれの東京育ちのせい?
どういう事情か母方のおばあさんの家に居候中。
そこで、准看護士の学校に通いながら病院でパートとして働きだしました。
第一印象から、はきはきしていて物おじせず、患者さんへの対応も完璧。
患者さんと会話を積極的にするのだが、常に片膝ついて、低姿勢で穏やかに傾聴。
よく気もつくタイプで、わからない事は積極的に聞いてきて、仕事をしていた。
その対応の良さから患者さんからの人気も高く、
「ご指名」がはいるくらいだ。
この若さで、すごいな~と思って経歴を聞いてみると、
いろいろな接客業のアルバイトをしていたようだ。
居酒屋、ファミレス、ペットショップの店員・・・
それにしても完璧な「接客」である。
根も素直で、誰に対しても優しい。
そんなパーフェクトに思える彼だが、唯一の欠点と言えるのは遅刻。
出勤時間も始業時間ピッタリに病棟に走って来て到着。
まあ、時給だし、時間内に入ればOKではあるのだが、他の職員は5分前には詰所に集まっている。
昔からの暗黙の了解である。
その中、いつも始業時間30秒前になると階段を駆け上がってくる足音。
みんな、ドアを見つめる。
すると、さわやかに彼がドアを開けて入ってくる。
「おはようございます!」
まさに、スター参上だ。
息を切らしながら、うっすらと汗を流しながら・・・
みんな、何事もなかったように
「おはよう、じゃあ申し送り始めましょうか」
と、仕事が始まる。
これが、彼ではなかったら、上司からお小言のひとつもありそうだが・・・
誰も文句を言う人もいない。
彼も計算してやっているわけではなさそうで、
まさに天然の「人たらし」だ。
他にも、昼休み、昼寝しすぎて戻って来なかったりなど、
とにかく時間にルーズ。
が、不思議と憎めないタイプのようで笑って許してもらえた。
そんな彼も准看護士の試験も合格、
そして東京の正看護師の看護学校に合格したとの事で東京へ帰っていった。
最後の勤務も、盛大に送りだしてもらい、
患者さんからは寂しいと泣かれ、病棟を去っていく彼。
もう会う事もないだろうが、愛される看護師さんになって欲しいと思う。
ただ、時間は守ってくれたらパーフェクトですね。