母に振り回されっぱなしの父。

 

口では勝てないので、結構黙って耐えているようでした。

 

私には結構当たったりしていたのですが、母の言うとおりにしていた父。

 

言っても、うるさいので、そうしていたのかも・・・

 

そんなストレスMaxであったろう父。

 

その父の趣味は園芸でした。

 

園芸の本を買って来て、独学で庭に花を育てていました。

 

小さな庭にこれでもかと言うくらいたくさんの花。

 

牡丹、桃の木、バラ、水仙、梅、松・・・とにかくビックリするくらいの数。

 

少しづつ植えて、育てていたのでしょう。

 

シルバーが休みの日は一日中庭で雑草を抜いたり、


花に水をやったりしていたようです。

 

たくさんの花々が咲く頃、


近所の人たちが見に来るほどになっていました。

 

「綺麗な庭ですね」

と、近所の奥さん。

 

照れたように父が笑って言う

「いや~、嬉しいね」

 

「家の人も、こんなきれいな庭で喜んでるでしょうね」

と、奥さん

 

少し間をおいて


「家の者は誰も気づいとらん・・」

 

 

偶然、その会話を聞いてしまった私。

 

近所の人もバツが悪そうに

「そんな事ないですよ」

と、フォローしていたが・・・

 

確かに父の言う通り、私たち家族が父の庭について話したことは無かった。

 

母は自分の体調に目が向いていたし

 

私は仕事と家事で余裕が無かった・・・

 

夫も同じく・・・

 

息子は花に興味はなさそうだったし・・・

 

これが別居していてたまにかえる「実家」だったら、


気が付いたかもしれないが

 

同居してると、いつも見ていて気にも留めていなかった・・・

 

「家の者は誰も気づいとらん」


と、言った父がこころなしか寂しそうだったのを覚えている。

 

父亡き後、数は減ったが父の残した花たちは季節が来るとひっそりと咲いている。

 

父が生きているうちに一緒に話したかったなと今も後悔している

 

「綺麗な花だね・・・」