私には尊敬する憧れの先輩がいた。


それは私が初めて働いた職場の看護師さんだ。


歳は私より7歳上

金髪で紫のアイシャドー

唇は暗赤色のルージュ


見た目の派手さに地味な私は

「お近づきにはなれないな」

と、距離を置いていた。


当時の私は看護学校の先生からも

「看護師向いてないから辞めなさい」

と、言われるほど不器用で消極的な性格だった


そんな私、初めての職場ではもちろん親しい同僚も出来ず仕事も半人前


「もう辞めてしまいたい」


いつも重い気持を引きずって病院へと向かっていた。


そんな私にこの派手な先輩は何かと話しかけてくれた。


そんなある日、遂に私は「誤与薬」という失敗をしでかしてしまった。


初めての失敗

半ばパニック状態の私


その時、先輩が素早く私を連れて師長へ報告。


「私も確認不足してました、すみません」


先輩は全然関係なかったのに私と一緒に謝ってくれた。


そして先輩は報告書や、先生、患者さんの家族に報告、謝罪を迅速に処理した。


まだドキドキして行動出来ない私に先輩は

「次、間違えないようにしよう!ドンマイ!」

と、背中を叩いてニッと笑った


そんな事があってから、先輩は他の同僚も誘って飲みに連れて行ってくれた。


同僚も交えてドライブに誘ってくれたり、私が自然に周りに溶け込めるようにしてくれた。


「私は18で妊娠、結婚、出産して20で旦那が事故で死んで20歳で冠婚葬祭終わったんよ」


あっけらかんと豪快に笑って話す先輩。


親も死んで兄妹もない天涯孤独だった先輩


全くそんな事も感じさせない明るい先輩


大好きで尊敬してました。


私の結婚式に来てくれた時

「よかったね!幸せにね!」


これが最後に交わした言葉でした。


結婚後、遠方に引っ越した私


先輩と会う機会もなく時が流れ


私が40歳になった頃、突然同僚からの電話で先輩が亡くなった事を知りました。


膵臓癌、享年47歳


葬儀場に駆けつけましたが実感がわかず、先輩の顔を見た時、涙が溢れてきました。


私、先輩にきちんとお礼を言っていなかった。


なんで連絡を取らなかったんだろう。


後悔ばかりの毎日でした。


あれから10年以上たっても、あの楽しかった日々が蘇ります。


あの時先輩が引き合わせてくれた同僚とは時々連絡を取り合ってます。


今も看護師として働けるのも先輩が自信をつけてくれたお陰です。


本当にありがとう、先輩。