20歳くらいの頃、深夜の『金髪先生』という番組が好きでした。
当時金髪だったドリアン助川さんが海外のロックミュージシャンの歌を取り上げ、日本語訳とその意味とそのミュージシャンの背景などを分かりやすく丁寧に面白く教えてくれるステキな番組でした。
『金髪先生』は書籍にもなり、私は新宿紀伊国屋書店にて行なわれるサイン会に並んだほどです。

ドリアン先生原作の『あん』が映画化されると聞いた時、とってもドキドキしました。
原作大好き!この役はどなたが演じるんだろ?どの役でもいいから出たい!色々な想いがグルグルし過ぎてグルグルなまんま公開されてからなかなか観に行く事が出来ませんでした。思い入れが強すぎるのも困ったものです。

でも、本当に、観に行って良かった!
あの本の中の世界が美しく映像となっていました。
樹木希林さんがとにかく素晴らしかった!
最初の方の「桜が綺麗ね」という感じの台詞ひとつで何故か泣けてきました。
それから劇場内が明るくなるまで、いちいち泣いていました。たまに笑ってはもう心がキュウキュウするくらい泣けました。
原作ではドリアン先生以外考えられないんじゃないかと勝手に思っていた「どら焼き屋の店長さん」の永瀬正敏さんも物凄く良かった!
観終わってからも暫くずっとずっとこの映画の事を考えていました。
空にうっすらと浮かぶ月を見て、映画の中で月がよく使われていた意味を自分なりに分かった気もしていました。
ふとした瞬間にあの独特の樹木さんの声が聞こえてきました。
内田伽羅さんの本木雅弘さんのDNAを正しく受け継いだ意志の強い真っ直ぐな眼と魅力的な表情を思い出しました。
風が運んでくる声を感じました。


『金髪先生』の中でドリアン先生は色々辛かった時にベランダのヘリに立ってしまったお話をされた事があります。
そのまま一歩踏み出さなくて本当に良かった。
生きていれば色々あります。
ドリアン先生の言葉はそんなベランダのヘリに立ってしまうような想いを抱えてる人、抱えた事がある人に優しく優しく響くのです。
『あん』は原作本も映画もそんなドリアン先生の魂のこめられた作品でした。

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我が家の『あん』消しゴムです(笑)
私は消しゴムも集めているのです。