「謝るなら、いつでもおいで」読了。
324ページに渡るこの本を私は寝る間も惜しんで、呼吸をする事も忘れてしまう程グーッとのめりこんで読んでしまった。

10年前に起こった「佐世保小6同級生殺害事件」。
ブルーシートに覆われた少しだけ見えた細い足首にドキッとした。
女の子が女の子を殺してしまったのだ。
子供による残虐な事件は少し前から問題になっていた。神戸の酒鬼薔薇少年事件では、当時私が主演していた「エコエコアザラク」が、作中の残虐性を懸念され、悪影響を及ぼすとして途中で打ち切りとなった。
そういう経緯もあり、そして子供が産まれてまだ1年しか経っていなかったこともあり、この事件はとても心に残っていた。
それから10年、この本は発売された。
あの時産まれた子は、被害、加害少女達と同い年になっていた。

作者の川名さんは、被害少女のお父さんの部下であり、少女と顔見知りの為、当時は発表されなかった細かな所まで凄まじい臨場感を持って書かれている。
記者としての一歩引いた報道ではなく、心が壊れそうな慟哭が聞こえて来るような文章だ。事実、読みながら嗚咽してしまった箇所もある。

最後に被害少女の父、加害少女の父、被害少女の兄の言葉が載っている。
タイトルの「謝るなら、いつでもおいで」はお兄さんの言葉であり、題字もお兄さんが書かれている。
子供であり、親子とはまた違う血の繋がり、信頼や共有をもつ兄である彼の立場や思いには心がギュウギュウ締め付けられる。
お兄さんの言葉にこめられた思い。(私の想像のはるかに上をいく)強く深い思い。

この本は「事件」の話でもあるが、私はこの本の全体的なテーマは「家族」の話であると感じた。
川名さんが必死で真っ直ぐに向かい合い書き綴った10年を決して忘れることは出来ない。
本棚に手を伸ばし何度でも読みたくなるような本である。