「何を言っているのか分からない」と、今まで何度も言われた。
友達からも言われていた。

「初めは何を言っているのか分からなかったけど、しばらくしたらだんだんなれて
分かるようになってきた」と言われていた。

これ、ふざけて冗談で言っているのだと思っていた。
笑いをとろうとしているだけだと思っていた。
普段、普通に会話しているから、からかって面白く言っているだけだと疑わなかった。


高校の頃
「苛めているつもりはないけど、君が何を言っているのか分からない」と先生から言われ
問題の回答を10回くらい繰り替えさせられた。
「ほらもっと大きな声で」と言われたので、そうしたのに先生には聴こえなかったみたいで
縦長の顔をしかめて苛立たしげに首を傾げた。
怖い男の先生からそんな態度を取られると、威圧感がある。
何度も何度も促されたけど
とうとうスルーされて後ろの席の子に譲られてしまった。

そのとき、私の周りの女子(男子はしらない)は、聞こえるのに
先生、耳が変なんじゃないの?って言っていたから、先生の耳が悪いものだと思っていた。
だって、到底アリエナイ状況に思えた。

よく、祖父が
「おまえが何を言っているのか分からない」って言っていて
聴こえないって言っていたけど、冗談だと思っていた。
そういう冗談を言う人だったし、だいいち年寄りだし。耳も遠くなるだろうし
深く考えていなかった。
だって、わたしは普通の人と変わらず喋っているつもりだった。


電話で口論になり、仕事上のことなので譲れないというか
こっちに非がないのを説明していたら、突然「ちょっとオモチャみたいな声やめて、何を言っているか
分からないし、耳が痛い」ってキレられて叱られた。
定年退職前の方だった。

きっと、自分がミスしたって認めるのが嫌だからなのかなって思っていた。

仕事先の上司のご家族で、お義母様だとか年配の方から電話がかかってきて受話器をとると
何度も聞き返され、何を言っているのか分からない。聴こえないといわれてカチャンと切られた。
ショックだった。
そのご家族とは、ご両親お二人とも、通じなくて毎回切られた。

その上司さんに事情を説明したら
「痴呆が始まっているのだろう」といわれたので、恐縮しながらも
自分が悪いとは思わなかった。

歳をとると、高音が聴き取れなくなると、テレビでやっていた。
私の声は、高めらしい。
だからかもと少し反省して、出来るだけ低い声で話すことにした。
でも、早口や大きな声で話すと、高音になる。

隣の家の犬は、私が喋ると、遠吠えを始めていた。
普通に喋っているのに、遠吠えを始める。

その頃から、声が高いから仕方ないのかもと理解するようになっていた。
でも、納得は出来なかった。

シアターの仕事をしていたとき、音響さんから音をいじられ、さらに高い声にされてしまった。
マイクを通した声が劇場にキンキン響いていて、ほとんどプロの友達から引かれた。
わたしも引いた。
ここまでキンキンの声のはずがない。
わたしこんなんじゃないって思った。
「音響さんは、あなたたちの声を魅力的にしてくださる」と説明を受けていたのに、なんだったんだ。
音響は、バイトの人が多かったし、ふざける人だったから面白がっているだけだと思ったけど
「私ちゃんの声、耳が痛い」って言われて、仕事仲間から引かれた。
音響が悪いんだろうと思うしかなかった。

なんというか、なるべく低い声をだすようになり、ずいぶん改善もしたつもりだけど
大きい声のときはどうしても高くなる。
でもまあ、仕方ない。
身近な人が理解できるなら、支障はないだろう。
とりあえず、困ってはいない。


けれど、先日。
母までが言い出した。
「アンタが何を言っているのか、ぜんぜん分からない。聞こえない」
と言い出したのだ。

「この声が聞こえないわけないじゃない。聞こえるでしょ?わたし、しゃべってるのがわかるでしょ?」って
問い詰めると母は言った。

「ほら、鳥とかが一生懸命鳴いているけど、何言っているのか分からないでしょ?あれと同じ」

だって。゜ヽ(゜ŎДŎ゜)ノ゜。。

ものすごく酷い例えだけど、急に理解できた。
今まで聞こえないとか、何を言っているのか分からないと言われていたのって
そういうことなんだ。

本当に、意味不明の言葉を口から出しているのか、すごく疑問だけど
でも、人が「分からない」と言っているのは、そういうことか。

「聞こえない」じゃなくて「聞き取れない」ってことなんだね。たぶん。
言葉に聞こえないってことか…。そんな馬鹿なって思いたいけど。

そう思いたいけど…母も大真面目だったんだよね。

可笑しすぎて悲しくなる。
わたしって、一体なんなの?
そんな変わっているとは思えないのだけど。(そう思うのは自分だけだと冷たく言われた)
理不尽に思えてならない。

相手の話は分かるし、会話だって出来ていると思っている。
でも、ときどき「何を言っているか分からない」「聞こえない」といわれる。
それはとっても不安になる。