春の陽気に包まれた日、借りた車椅子で近所に散歩に出掛けた。
母はここに住むようになって50年程経つ。
ご近所さんもたくさん知り合いがいた。
近所をゆっくり周り、友だちとの関係や思い出話を聞きながら進んだ。
インターホンを押して話したら?と言ってみたが、
ええわ。お庭に出てはったら喋りかけるけどわざわざは、、とインターホンは押さなかった。
母は私と違って人と話すことを自然と積極的に出来る人だった。
改めて知り合いの多さ、人のいいところしか言わない人の良さに心の中で脱帽した。
どなたにも会わないねぇと言いながら
そろそろこのカーブを曲がると自宅へと続く道だ。
すると反対側からよく小さい時に意地悪を言われた嫌なおばさんが歩いてきていた。
、、、なんでこの人なん?、、私は思った。
母も嫌な思いはしたことがあったが、ニコニコと話し始めた。
おばさんは前とは随分違って、どーしたの?車椅子乗ってと母の肩に手を当て、さするようにして話しかけていた。心がこもっているのを感じて私も嫌な気分にはならずに済んだ。
歳をとって丸くなるってこうゆうこと?
随分感じが変わったなぁと感じた。
『癌やねんなぁ言うてんねんやん』明るい癌の告白をした。
おばさんも半分うそばっかり!と半信半疑な感じである。
そりゃそうだ。タイミングも言い方も大病を患ってる人の言い方でない。
でもこんな風に大事にしてもらってええやんかぁ。
大体私と母と一緒にいるとこの言葉が締めくくりとなることが多い。
お元気で〜お互い声をかけて別れた。
こんないい天気やからもっと誰かに会えるかと思ったのになぁと言うので
また散歩しような!
そう言って自宅に戻った。