彼との一週間。① | 賞味期限つき、料亭の恋。

彼との一週間。①

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あの一週間は、夢のような一週間だったわ。


もしかして夢だったのかもしれない。


あの時の一週間で、私たちの距離はとてもとても縮まった。




夏の終わり。秋の始まり頃だった。


彼の奥さんが子供と一緒に旅行することになったの。



初日。


私も、彼も、浮かれていたわ。店を休んだし。


初めて、昼から晩まで一緒にいることができた日だった。


彼は釣りが好きだから、ダムに行ったの。普通のダムなのに、彼といるとすべてが美しく感じた。


緑の木々。


水面の光。


夕日の眩さ。


2年も前なのに今でも、はっきりと覚えてる。



それから焼肉を食べに行った。肉を焼くのにとても緊張していたわ。そしたら彼が焼いてくれた。


そして。


その日初めて、彼の家に行った。


彼の家は、忘れたいのに忘れられない。


独特な子供のにおい。


床に転がる子供のおもちゃ。


きちんと片付けられたキッチン。


壁にかかってる写真。


いっぺんに現実が襲ってきて、私は泣いた。


彼は結婚していて、家庭がある。


彼が私の頭をなで、「ごめん。家を出ようか?」と言った。


けど私は首を振り、あの家で寝た。


私の小さな復讐。


ほんとに小さな小さな、復讐。