ふんっ

 全く面白くないね




しず姉さん

ご機嫌ななめで ありんすな

太夫
今朝は わっちがいない間に
地主様が
おいでに なったとか



やっと 
会えるかと思ったのに

しず姉さん…
でも 地主様は すぐに
お帰りに なったと聞きやんした



今朝は 皆にと 色々と
届け物を 



そして 近いうちに
百人一首を やろうと
言って お帰りになられたと
全く 何を 考えているのやら




君がため
春の野に出でて 若菜摘む
我が衣手に 雪は降りつつ
誰の哥か 太夫
知っておるかえ



あい
光孝天皇の哥で ありんすな


あなたに 差し上げるため
春の野に出て
若菜を摘んでいる 私の袖には
雪が 降り続いています
恋しい人への 真心を
歌ったと…





 雪の中 袖を濡らし 
七草を集め 愛しい人の
無病息災を 願う健気な哥で
ありんすな


あい
そう言えば 今日は 
七草粥の日でありんしたな




せりなずな ごぎょうはこべら
ほとけのざ すずなすずしろ
これぞ ななくさ
七草は 早春に 
いち早く芽吹く事から
邪気を払うと云われ


人日の節句  一月七日に
食べると 縁起が 良いと風習に
なったので ありんしたな




あい
きっと 地主様も 皆の事を
思って 届けてくださったので
ありんしょう




それにしても 何も わっちに
黙って 帰らずとも



しず
心配せずとも 地主様は
ちゃんと あちきが
もてなして おきやんした
りょう!まさかっ!
それで 今朝は わっちに
使いを 頼んで…



ククク
ほんに しずの怒った顔は
福笑いよりも 面白いねぇ
ふんっ
面白くないねっ



ね…姉さん…



ククク
ほら 二人とも
粥が 冷めてしまうよ

ほんに りょうには
困ったもので ありんすな


さて 春の七草には
意味がありんしてな


せり(競り勝つ)
なずな (撫でて汚れを払う)
ごぎょう(仏の体)
はこべら(繁栄)
ほとけのざ(仏の安座)
すずな(神様を呼ぶ鈴)
すずしろ(汚れない純白)
寒い季節に 温かい粥を食べ
病に 罹らぬよう
暖かい春を 待ったので
ありんしょう




あちきも 北の国の方々へ
一日でも
早く 暖かい春が訪れる事を
皆様と 共に 祈りやんして

今宵は これにて
オサラバへ

令和六年 睦月
まどか