ゴキブリの気配を感じた。


何回か仕留め損ねているが、ヤツの動きは把握した。

流しの下と、冷蔵庫の下を行き来している。


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まだ20世紀だった20代、私は、友人らと公園で遊び、腹ごしらえに食堂にはいった。



大阪の下町。

『あけぼの』か『ことぶき』そんな名前だったとおもう。


丼もの 定食 麺類。

お決まりの食堂メニューは、安くて助かる。


注文を終えて食事を待っていると、

隣りのテーブルのおっちゃんが言った。



おばちゃん!このカツ丼、コオロギはいってんで?!



のぞいた友人がつぶやく、、


うわっ!たまごから、背中が見える😱


オレ、カツ丼頼んでんねんで😫



おばちゃんの返事を想像してお読みください。





あ〜、ごめんな、冷蔵庫の下にたくさんおんねん!


次の、おっちゃんのターンが神だった。




あー、そうなん?わかったわ!


一切、怒りのニュアンスのない、フツーのやりとりだった。


おっちゃんは、そこをよけて平らげた。


そして、

○○円です!

ごちそうさま!


フツウに会計をすませ、おっちゃんは出ていった。



値引きとかないんや

金取るんや、

おっちゃんやさしいなー


我々はヒソヒソ囁きあった。


カツ丼の子が、たまごと肉の境目をくまなく点検したのは言うまでもない。

 


今思う。


あれはゴキブリだと。


冷蔵庫の下なんて、奴らの格好のすみかではないか!


コオロギがたくさんいたら、やかましいはず。



ゴキブリも、黒くて大きいのや、茶色のミドルもいる。



コオロギだって、つやつやの大きいのや、小さいのもいる。


たまごに閉じられて、背中だけしか見えなかったんだから

間違えても不思議ではない。



ゴキブリ!というと気まずいから、咄嗟にコオロギに変換した、おっちゃんの優しさだったのか???



真相は闇の中、、、





それにしても、現代でなくてよかった。

こんなこと、すぐつぶやかれたりして拡散されて、お店も叩かれたり、ロクなことにならなかったかもしれない。