韓国の二大航空会社であるアシアナ航空と大韓航空が、ついに経営統合へと動いた。この統合が世界の航空業界全体に与える影響は大きいが、中でも深刻なのは、日本におけるANAユーザー、そして世界のスターアライアンスネットワークにとって“間違い”としか言いようのない結末が待っているということだ。


アシアナ航空のスターアライアンス離脱という衝撃


まず、もっとも大きな影響は、アシアナ航空がスターアライアンスから離脱するという事実だ。アシアナ航空は長年、スターアライアンスの重要な一角を担い、ソウル・仁川を拠点に東アジアの要所として機能してきた。アシアナの離脱により、スターアライアンスは東アジアでの接続力を大きく失うことになる。


ANAにとってはさらに致命的だ。これまでANAは、アシアナと提携し、ソウル経由で中央アジア、モンゴル、ロシア東部、さらには一部のヨーロッパ都市までネットワークをつないでいた。アシアナのきめ細やかな運航とANAの連携は、アジア域内での強力な代替経路を提供していたが、それが失われる。スターアライアンス加盟航空会社の中でも、アシアナほど東アジアに特化し、地理的にも利便性の高い拠点を持ったキャリアは他に存在しない。 


特に宮崎とカンボジアへのアクセスとしてアシアナ航空は重要視されていた。宮崎を昼に出発し、プノンペンには23時に到着する。折り返しは0時に出発して、宮崎には11時半には到着する。


大韓航空のスカイチーム偏重と日本敵視のリスク


今回の統合によって、アシアナは大韓航空というスカイチーム中核の航空会社に吸収され、事実上スカイチーム勢力に取り込まれる。この統合によって、ANAは韓国路線のコードシェアや接続便の多くを失い、逆にJALとスカイチームとの連携が強化される恐れすらある。


さらに問題なのは、大韓航空の“政治的偏向性”だ。過去においても大韓航空は、反日世論の影響を受けやすく、日本路線の減便や運休を頻繁に繰り返してきた。特に安全保障や領土問題が浮上するたびに、日本人利用者を軽視するような路線政策を展開してきた企業だ。そのような航空会社が韓国の国際線の大部分を牛耳ることになれば、日本人利用者、とりわけANA利用者にとってのメリットは皆無である。


ANAとスターアライアンスが採るべき道


本来であれば、アシアナ航空の経営再建にあたって、ANA・エアチャイナ・シンガポール航空またはスターアライアンス連合が主導権を握り、出資・再編を行うべきだった。アシアナを大韓に売り渡すという判断は、短期的な財務リスク回避にはなるかもしれないが、長期的に見ればスターアライアンスの東アジア拠点を失い、中国勢やワンワールド・スカイチームに対して著しく不利な立場に追い込まれる選択である。


これは単なる企業再編ではない。ネットワーク戦略、アライアンス戦略、そして地政学的安全保障の観点から見ても、誤った一手である。ANAのユーザーにとっても、仁川経由での選択肢が事実上消え、選択肢は狭まり、利便性は低下する。特にアジア路線が不安定な中、韓国経由という“安全な第三国トランジット”が封じられるのは痛い。


結論:これは「業界再編」ではなく「アライアンス敗北」である


アシアナと大韓の統合は、一見すると韓国航空業界の合理化であり、財務安定のための必然的な選択のように見える。しかしそれは、ANAユーザー、そしてスターアライアンスにとっては「敗北宣言」である。