ひものもう少しで
芸能人
になるとこだった
ある日の夕方
友達と大型ビルのフロアで待ち合わせした
指定したのはひもの
そのビルには凄く高級な
ソファーがあって
外から見てもよくわかる
ここなら
優雅な時間が過ごせるだろうな
約束の時間より前に着いたひもの
その座り心地のよさを確かめながら
ひとりニヤニヤしてたら
最初は若い女の子が
二人とか三人とか
やってきた
ひものはもう三十近かったので
そこそこ落ち着いた服装してたんだけど
こんな商業ビルにおよそ似つかわしくない
安っぽい恰好をした
若い女の子が
ぞくぞくと集まってくる
みんなバラバラに立っているけど
何が目的なのかさっぱりわからない
誰ひとりたち去ることもなく
気が付けば
フロアは若い女の子で埋め尽くされ
正直、驚いたというか
気味が悪くなってきた
するとイベントかなにかの係の人が数人あらわれて
みなさぁ~ん
こちらに集まってくださぁ~い
と、大声を張り上げた
この時初めてひものは
あぁ、みんな
これを待ってたわけね
と納得し
巻き込まれたくないので
呼ばれたのと反対側に歩き出したら
係の人が
あなた
そっちじゃありません
こっちでぇぇぇ~~~すっ
いっ、いやそのひものは
すると
あのねぇ、忙しいんだから
言うこと聞いてくださいよ
えっ?なんで?
エレベーターに詰め込まれるひもの
ちょっ、ちょっとあんた
そんなむちゃな
絶対ひもの浮いてるし
エレベーターの中では
ババアだからって
変人扱い
エレベーターを降りると会場が用意されてて
なにかの面接みたいなことするらしく
受付に並ぶ若い女の子たち
ほんと
バカバカしい
ひもの
いくつに見えてんの?
こんな若い子と
ボンボンもって足あげて
ドームのラッキーセブン
歌って踊るなんて
嫌じゃ
応援なら
観客席でするから
心配すんな
そこにはでかでかと
地元球団の名前と
それを応援する
「〇〇〇ズ募集会場」
ふざけんなっ
帰らせて
いただきます
フロアに戻ろうと
エレベーターに向かうと
係の人が
係 「何してるんですか?」
ひ 「帰るんですよ」
係 「なんで帰るんですか?」
ひ 「関係ないからですよ」
係 「じゃあなんでここにいるんですよ」
ひ 「それはあんたらが連れて来たからですよ」
さっさとそこ
どけぇぇぇ~~~~~っ
ひもの急いでエレベーター乗って
一階のフロアに戻った
するとソファーに座って待ってた友達が
ひもの、なにしてんの?
どこ行ってたの?
頭にきて
事の顛末を
かくかくしかじか
全部話してやったら
友達は
大爆笑しながら
いやいやわたしはいいから
遠慮せずに
受けてきたら
上手くいったら
私もドームいくから
そこで
お会いしましょう
地元球団の
観客と○○〇ズとして
いやね、あいつら頭おかしいって
こんなババアが応募するとか
想像してみ
もしひものが係の人だったら
ババアにまとわりつかれても
知らん顔する
ババアはエレベーターから
引きずりおろす
その夜、友達からずっとからかわれた
いやぁ~っ、わたしのせいで
芸能人になりそこなって
もったいないわぁ~っ
後から聞いたら
ほんとに
○○〇ズになると
一時的とはいえ芸能事務所に
所属するらしい
今思うと
たとえ道は違えど
一応テスト受けて
こいつは○○〇ズじゃ無理だけど
芸人なら
イケるかも
と思ってもらえたかもしれない
そう考えると
人間どこにチャンスが転がってるか
わかんないんだな
その見極めを
ずっと逃してきたから
ひもの人生の
不合格者に
『なるんだよ!』まじみんなピチピチだった( ´艸`)その中にババアが参加だよ