彼と私の関係は順調に続いていくように思われました。

週末は彼と過ごし、平日は私は学校に行き、彼は仕事に行く毎日。

週末には彼の友達と一緒に外食したり、ボルダリングしたりハイキングをしたりもしました。

私はアメリカに来てから友達と呼べる人がいなかったので、彼の友達と一緒に出掛けることで、アメリカの同世代の人と仲良くなる機会が出来たことを嬉しく思いました。

でも、この人たちは私の友達ではなくって彼の友達。

彼がいなければ私と話すこともないんだろうなあと思うとなんだか気持ちが落ちました。

その証拠に、私は話の輪にほとんど入ることができないのです。

彼は私を会話にいれようと話を振ってくれます。

するとみんなが私のほうを向いて、私の発言に耳を傾けます。

怖いんです。

私以外はみんなアメリカ人(カナダ人もいるけど)。

英語が通じなかったらどうしよう、と思いました。

笑われたらどうしよう。

彼の友達と会話することは、当時の私にはクラスでプレゼンするくらい苦痛なことでした。

彼のことが大好きだから、彼の前で恥をかきたくない、そして彼に恥をかかせたくなかったんだと思います。

 

彼の友達の輪の中には、彼の元カノの姿もありました。

彼の元カノはオレンジ色の髪の毛に口ピアス、鼻ピアス、腕にはTattoがあって、元カノを見た瞬間『彼は一体私のどこに惹かれたのだろう?』と思いました。

それくらい自分とかけ離れた容姿だったからです。

元カノは、容姿だけ言えば美人ではないと思いました。

でも、彼の話によると、彼女はなんだかすごいロボットを作ったり、それについていろんな国を講演してまわっているようで、すごく稼いでいるとのことでした。

それを聞いてぶっ飛んだ容姿にもなんだか納得がいきました。

それと同時に自分がすごくちっぽけに思えました。

私は収入もないし、ロボットを作れるような頭もないし、なんのとりえもない、、勝ち負けなんてないはずなのに『負けた』と思いました。

 

彼は『自分と僕の元カノを比べるなんてことしないでよ。僕はJunのことが今大好きなんだから、それを信じてよ。』と私に言いました。

私は口ではわかったと言ったけど、本当は劣等感でいっぱいでした。

それ以来、元カノのことで喧嘩することが多くなりました。

たとえばある日友達と出かける際に元カノも来るとわかったので、私が行きたくないというと『そんな子供っぽいこと言わないでほしい』と言われたり、、

またある日は私が野球好きなのを知って彼が一緒に今度野球観戦に行こうと言ってくれた時、『元カノとも野球観戦行ったんでしょ?だったら私は行きたくない。』と言ってみたり、、

はたまたある日は、元カノの胸の大きさと自分の胸の大きさを比較して一人落ち込みイライラして彼にあたってしまったり、、

 

全部わたしが悪いんです。

勝手に比較して、自分を卑下して悲劇のヒロインぶってたんです。

ある日、彼に言われました。

『このままずっとこんなに元カノのことで嫉妬してヒステリックになるなら、カウンセリングに行くことを考えたほうがいいと思うんだ。僕も昔母親が亡くなった後にカウンセリングに通ったことがあるんだけど、すごく効果があったから、、きっとJunにも効果があらわれるんじゃないかな。』

わたしはショックでした。

カウンセリング受けたほうが良いよと言われるくらい、わたしの行動や態度が彼を嫌な気持ちにさせていたことがショックでした。

それまでわたしはカウンセリングを受ける=心が弱い人、と思っている節がありました。

わたしは自分が心の弱い人だと思いたくありませんでした。

なので泣いてカウンセリングにはいきたくない、自分でなんとかしたい。と彼に伝えました。

すると彼は『カウンセリングはJunが行きたいと思ったら行けばいいし、無理には勧めないよ。』と言ってくれました。

 

その後、叔父さんにそのことを相談してみました。

過去のことなのに、彼と元カノのことを想像すると嫉妬してしまうこと、自分が元カノより劣っているようでみじめな気持ちになることを正直に話しました。

すると叔父からこんなアドバイスをもらいました。

『Fake it till you make it』

嫉妬はする、みじめな気持ちにもなる、それは人間だから仕方のないことだと。

でもその嫉妬心やみじめな気持ちになった時の気持ちの矛先を彼に向けて爆発させるのは間違っていると。

だから、そういうネガティブな気持ちが沸き上がってきたら、それにちゃんと向き合って受け止めていいんだって。

『うん、嫉妬はする、みじめな気持ちにもなる。でも大丈夫。私は平気。』って自分をだますんだそうです。

私からしたら結構目からうろこな考え方でした。

 

それを聞いてから、すぐに実践することにした私。

そうしたら、それまで彼に向けてたやり場のない気持ちが自分の中で消化できるようになりました。

ヒステリーを起こさずに一ヵ月が経った頃、彼が『最近とっても穏やかになったね。きっと感情をコントロールするように自分で努力してるんだなって僕にも伝わってきたよ。』と私に言ってくれました。

すごく嬉しかったです。彼に対してというよりも、自分で自分をほめてあげたい気持ちでした。

 

それ以降も元カノと一緒に会ったりする機会がありますが、前のようにああ行きたくないな、会いたくないな、、と落ちることはなくなりました。

元カノがどんなに頭が良くて素晴らしい人であっても、二人の間にうまくいかなかった理由があるからこそ今は『元カノ』なのだと。

自分と元カノを比べる必要などないのだと気づきました。

自分にはロボットを作ったり、世界中で講演するスキルはないけど、、彼と居るうちに、私には私にしかない魅力があるんだと思えるようになってきました。