赤と黄色
フェミレスでの思わぬ告白から、1時間ほど経過しました。
アタシの涙も乾いて、気持ちも少し落ち着きました。
「本当に、ケイチンの子供じゃないの?」
「絶対に違う!」
「だけど、戸籍上は子供になってるんでしょ?」
「・・・でも本当に違うんだよ!
今は戸籍上そうなってても、俺はもうすぐ離婚するし」
当時のアタシには、戸籍のこと認知のことに関して、ほとんど知識があありませんでした。
圭太の子供ではなくて、奥さんとももうすぐ離婚するのだから、
圭太とその子供はそのうち関係がなくなるのだろう、くらいに考えていました。
圭太の奥さんが妊娠していたこと、子供が生まれたことはとてもショックでしたが、
奥さんはどうして他のオトコの子供を生んだのだろうか、と
そのことがとても気になりました。
奥さんが浮気したのは、圭太に原因があったんじゃないだろうか・・
妊娠中もアタシと遊んでたなんて、いくら自分の子供じゃないにしてもありえるかな・・・
「ラム。
俺はこんなに誰かを好きになったこともないし、お前と付き合うまでは毎日が苦痛で仕方なかった。
結婚も離婚もどうでもよくて、別にこのまま離婚しないで別居したまま他のオンナと適当に遊べばいいと思ってたんだ。
だけど今は違う。本当のラムが好きで好きでどうしようもないくらいなんだよ。
自分の為にもラムの為にも、きちんとしようと思ってる。
だから、もう少しだけ待ってくれっ、な」
奥さんのことは何もわかりませんでしたので、
アタシは圭太の話を信じるしかありませんでした。
この日、アタシ達はホテルで愛し合いました。
圭太のことを信用したわけではないけれど、
別れるなんて考えられませんでした。
つまりアタシは、無理やり自分の心を信用させて、圭太との付き合いを選んだのでした。
それから数日後、ハワイ旅行の予定が全て決まったと圭太から連絡が入りました。
その週末、圭太と会うとすぐにハワイの本を買って、
ハワイ旅行に向けて準備し始めました。
夜、いつものように圭太とセックスしている時
ふと、背中にボコボコしたところがあります。
「ちょっとっ」
アタシが背中を見ようとすると圭太は拒否。
まさか・・・
無理やり背中を見ると、
圭太の背中の刺青に色が入っていました・・・・
「なんで・・?」
「だってよ、中途半端じゃん」
出会った時から背中に入っていた刺青でしたが、色はついていませんでした。
まだ少しだけ筋彫りのところがあり、そこを完成させるのは仕方ないと目を瞑っていましたが、
色が入るとなると別です。
圭太の背中に描かれた龍には、
赤と黄色がそれはそれは美しく染色されていました。
「もう、これ以上はやめてって言ったじゃん」
「もう少しで完成なんだって。中途半端は気持ち悪いだろ」
圭太の背中は、完全にヤクザ映画で見るようなものになっていました。
圭太はいつもアタシの言うことなんて聞いてくれるはずもありませんでした。
その時はアタシの合わせていても、隠れて何かする。
そしてバレてから事後報告するのでした。