彼女はまさしくそんな感じ。



彼から聞いた話。





若くして、彼女はある男性と出会った。

将来有望なドクター。

もうすでにその国ではその名は知れ渡っていた。


一目ぼれだった。


オードリーヘプバーンのように美しかった彼女は


彼のハートをいとも簡単に射止め


互いは気持ちがすぐにつながり


結婚することとなった。




結婚して間もなく、長男が授かった。


彼女は喜んだが、夫は微妙だった。


次男が生まれた。


彼女は喜んだが、夫は家に帰ってくるのが遅くなった。


部屋が20以上ある大豪邸を購入しても、帰ってくる日はだんだんと減っていた。


そして3男、私の彼が生まれたとき、


彼女は喜んだが、夫は隣人の妻や女性に手をだすことを楽しみ、それどころではなかった。




3男が小学校に入り始めたころ


彼女は夫からの裏切り


親友からの裏切り


家族からの裏切り


親戚からの裏切り


で心身はぼろぼろとなり、離婚を決意


子供3人を連れて大豪邸を去った。




その後女手一人で問題3男子を育て上げた。


長男は15校、次男は11校、3男は9校 学校を変えなければならなかった(小学校~高校までの期間)。




彼女は強くなろうとした。


誰にも手を借りないで、夫からも慰謝料をもらわないで


一人でこの3人を育て上げてみせる。



そして彼女は見事に育て上げた。




しかし気がつけばもう60を過ぎ


自分には心を許せる人などいない。



もう誰からも傷つけられたくない。




そんな自分を守るために

何も失わないために

何も取られないために


彼女は棘を身にまとった。


強い言葉で、態度で相手を跳ね除け自分を守る。









そんな彼女の本当の美しさを見出すのに、私には相当な時間が必要だった。




あり。




「私の息子が彼氏だけど。何か悪い?」




それが初対面の第一声だった。




バツイチの65歳が、最強ライバル。



1日に最低でも5回の電話。



朝、昼、昼、夕方、晩、寝る前・・・



鳴り止まない彼の着信音。




週末となれば「デート」。



買い物、ランチ、彼との夕食作り。


知らないうちに部屋を掃除され、知らないうちに服を洗濯をされ


知らないうちに「失くすから」とパスポートを自宅へ持って帰られたことも。




彼女が重い荷物を持っているので気を使って「持ちますよ」と手を差し出せば、




バチン。




おぅ、手をはたかれた。





二人きりでお買い物を余儀なくされ頼まれていたコーヒーの商品名を忘れると




「あんたなんて嫌い。」






彼が私のために何かをすれば




「うちの息子って、昔から彼女に甘いのよね。前の彼女にも、前の前にも。」









最初の頃は、本当に苦手だった。



怖かった。



何を話しても棘ある言葉で返される。





そんな彼女を受け入れなければと、頑張った私は


これはきっと日本でもあることなんだろう

嫁姑ってこんな感じだろうし


と自分を励ました。



時に枕をぬらしながら。





頑張って



頑張って



異国の地で


この最強ライバルを最強な味方にすることができるようになったのは



つい最近の出来事。





あり。


何が一番ほしいのか


家族?


トモダチ?


彼氏?


オット?



私が一番ほしいもの


それは、 自分。


今まで私が気づかずに持っていた


自分。




ここに来て、自分のふがいなさに気づかされる


当たり前にできたことが


できない



当たり前だった環境が


作れない




紅茶を片手に


窓の外を覗けば


煉瓦作りの茶色の家が続いていて


道にはのっぽの体が屈み腰で歩いている


クラシックが乾いたこの空気にとてもあっていて


素敵な世界に浸っている自分に喜びも感じるけど



ふと気づけば ガラス箱に閉じ込められた自分がいて


自由が無いことに気づき


誰もいない部屋で


一人泣いたりしている




もっと単純な人間に生まれたかった



そんなことを思いながら今日の午後を過ごす




あり。