その日の母は、ご機嫌だった。
一緒に出かけてくれるという。
小さなアパートの一室。
私に割り当てられていたのは、ふすまで区切られた押入れ。
そこから出るには、母が外出している時か許可された時だった。
私という存在を見ないように、なかったかのようにしている母。
それが普通だと思って過ごしていた私。
グリーンのチェックのワンピースを着せられて。
連れてきてもらったのは、スイミングスクールだった。
親しげに話す男性。心なしか母の声がワントーン高い。
今日から通うのだという。
母が優しく話しかけてくれる。がんばって!
それが、とても嬉しくて。
喜んでくれるならなんでもしようと思えた。
3歳のとある金曜日のことだった。
はい。ということで。
わたしは、そんな3歳を過ごしていたのでした〜。
つづく。