3DS『ステラグロウ』ライナーノーツ | 作詞家・井筒日美(上園彩結音)公式ブログ~Flower of SOUND~

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作詞とフラワーセラピーとオラクルカード(花詩シリーズを制作)とタロットカードとガーデニングと。言ノ葉&花尽くしの日々。

SEGA様から無事発売となったニンテンドー3DS『ステラグロウ』。テーマは「歌の力が、世界を変える-」。剣と魔法のメロディアスSRPG。
私は、上園彩結音の名義で、「歌魔法」4曲の作詞をさせていただきました


「赤い銀河」  歌:モルディモルト(cv.新田恵海) ※土の魔女
   作詞:上園彩結音  作曲:ロドリゲスのぶ
「伝説の海へ」  歌:リゼット(cv.南條愛乃) ※水の魔女
   作詞:上園彩結音  作編曲:折倉俊則
「雷火來夜」  歌:サクヤ(cv.榊原ゆい) ※火の魔女
   作詞:上園彩結音  作編曲:Toraboruta
「冥闇ヲ割ル光」  歌:ヒルダ(cv.田村ゆかり) ※滅びの魔女
   作詞:上園彩結音  作曲:田畑三津広


ゲーム内では、魔女達の「歌魔法」がフルコーラスで流れるのですが、現在は歌詞カードがないので作曲家・編曲家のお名前が分かればまた追加させてください。

そのため歌詞の掲載は控えつつ、制作時のことを可能な範囲で綴ってみたいと思います。
多くのファンの方々のサントラ盤を願う声や、歌詞を耳コピでフルコーラス書き出してくださってたり、関われた一人としてもとても嬉しく感謝しています。私も音源が発売されて、歌詞カードでも味わっていただける日が来ることを心から願っています。

ゲームのあらすじ
戦乱の世となり、醜い争いを嘆いた神は、人々から「歌」を奪います。幾千年もの時を経て、、失われし「歌」の力を使える5人の魔女の存在が明らかに。そして「滅びの魔女」であるヒルダが「福音使徒」を率いて、「堕歌」と呼ばれる呪いの歌で世界を次々に結晶化している、さらには他の魔女達の抹殺をも企てている、とのこと。王国の騎士団は阻止し戦うべく立ち上がり、他の魔女達の行方を追うことに。かくて戦いの火蓋が…
というもの。


作詞のご依頼を頂いたときは詳細なシナリオを頂いて。それも最初は詞を書くよりも読破が間に合うんだろうかと心配になったほど(笑)各ルートごとにびっしりと膨大なボリュームのテキストでした。
でも読みはじめるなり、導入部から何が起こっていくのか惹きつけられてのめり込んでしまい、次の展開が気になってしかたがなくて、結局ほぼ完徹で読破しました。
魅力的な人物像、それぞれの魔女達が抱えた悲しみ・痛み・心の闇に共感させられて、それらを救い、心を解きほぐしてゆく過程で描かれる愛や絆に感動しました。
壮大な世界観の中に、魔女ながら本来人間が抱えている苦悩そのものがリアルに描かれていて、終盤の展開からの結末は、人類の善悪や業やさまざまなことを考えさせられ、心に沁み入る読後感で、重厚感のある物語の余韻にどっぷり浸ることが出来ました。



「雷火來夜」  歌:サクヤ(cv.榊原ゆい) ※火の魔女
   作詞:上園彩結音  作曲: __

『薄桜鬼』では和の世界をよく描かせていただいてることもあり、「上園さんにはまずサクヤの2曲目、和の歌詞からお願いします」とご依頼いただけて。
テーマはお祭り。といっても、楽しく賑やかなイメージではなく、火の魔女らしい、燃えさかる情熱、決意の炎で民たちを率いてゆく宴、といったイメージで捉えて描いています。
かけ声のような言葉を多用して盛り上がる感じにしてほしい、とのことだったので、火の魔女らしくて響きのイイ呪文のような音を探していくうち、閃いたのが「雷火」という言葉、「ライカライカ?」→「ライカライヤ!」でした。
これなら和風の造語にして、「来たる夜」の意味を込めたいなと「雷火來夜」に決めました。「雷火来耶」という表記がたまにあるけど、難しいほうの「來」に「夜」の表記になります^^*
この曲はとにかくボカロみたいに言葉が多くて、その意図通り詰め込んではめたのですが、さらりと歌いこなす榊原ゆいさん、サスガです。
命を讃え、一丸となって戦い、守り抜く決意を自らと民たちに呼びかける歌です。


「赤い銀河」  歌:モルディモルト(cv.新田恵海) ※土の魔女
   作詞:上園彩結音  作曲:ロドリゲスのぶ

続いてヒルダの2曲目の音源が届く予定でしたが、「レコーディング日程が早いのでこちらを先にお願いします」ということで飛び込みで頂いたのがモルディモルトの1曲目でした。
何ともクセになる妖しげなメロディー、一発で虜になってしまいました。聴くなりイメージが湧いて1~2時間で書いて提出した作品です。

ゲーム自体「歌」が核なだけに、先方様の歌詞チェックもかなり厳しかったそうで(笑)この曲が唯一一発OKだったと伺ってます。
私の他の3曲も2~3回修正しているので、この曲に関しては、最初は難しいテーマだと感じたのですが、歌詞通り「サクサク」と書き上がったのが嬉しかったです。
この繰り返し出てくる「サクサク」は、場所によって「咲く咲く」「裂く裂く」の意味を込めています。

歌詞全体を普通にさらっと聴くとファンタジーな世界観なのですが、『「目玉」焼き』など区切り方によってダークサイドへと変わる世界観を意識しています。
あることをしているシーンを比喩した、いわゆるダブルミーニングで、実はさらに、砂漠の街が滅亡したときのモルディの記憶と掛け合わせたトリプルミーニングにもなるよう描いています。
新田恵海さんが役になりきった素敵な歌声で表現してくださって、この効果を一層引き立てていただけて本当に感謝です。


「冥闇ヲ割ル光」  歌:ヒルダ(cv.田村ゆかり) ※滅びの魔女
   作詞:上園彩結音  作曲:田畑三津広

当初から予告いただいてたヒルダの2曲目が到着。こちらの〆は少しゆったりしていました。田畑さんの壮大で美しくも切なく激しいメロディーに導かれるように、千年を越えて生き長らえ、時を止めてきた魔女の悲哀を織り込んで、「永遠」とは「愛」とは何か、といったテーマで綴りました。
掛け合いのコーラスなども多いのが特徴で、どこか神秘的な浮遊感が、無限の時を刻む「風紋」のようにも感じました。
言葉や表現に凝った「厨二」的世界観がいいかも、とのことだったので、ヒルダらしいワードをイメージしてどんどん書き出す作業から始めました。
最初はもう少し直接的な表現があったのですが、数カ所にリテイクが入って、抽象的な表現に置き換えています。また、途中にはラテン語が語源となる言葉を組み合わせた造語で、架空の地名を忍ばせています。これらによって神秘性が増したかなと思います。

サビの起伏が大きな部分にも結構言葉を詰め込んでいるのですが、田村ゆかりさんの表情豊かな歌声に壮大な世界観を押し広げていただけてとても嬉しかったです。


「伝説の海へ」  歌:リゼット(cv.南條愛乃) ※水の魔女
   作詞:上園彩結音  作曲: __

こちらは「大至急でお願いします!」と駆け込みでご依頼いただいた最後の音源です。このときはTVアニメ『曇天に笑う』OPの作詞と〆切がどんぴしゃで重なって、曇天は全6巻のコミックも読破しなければいけなかったのでちょっと大変でしたが、どちらも創作は1~2時間ペースで仕上げられたので間に合ってホッとしました。

この楽曲は今までにない爽やかな雰囲気で、どこか華やぎのある流麗な旋律に開放感も感じられました。とても新鮮な気持ちでイメージを掻き立ててもらえたと思います。
「水の魔女」ということで、たとえば、無垢な乙女だけが近づけるというユニコーン、『タイタンの戦い』など神々の戦いで描かれるペガサスといった、神話上の動物や何か「神聖」な存在のものがリゼットを見守っている、そして自我に目覚め、固く閉ざした心を解き放つ瞬間を待っているような世界観をイメージしました。
覚醒したときのリゼットの力、神々しさをサビで壮大に描けたらと思いました。
凛と響くクリアな高音部がとっても魅力的な南條愛乃さんに伸びやかに歌っていただけて、この曲も宝物の1曲になりました。


以上、ライナーノーツです。

作品が完成した後、この作品でお世話になった音楽仲間の皆さんと久しぶり集まれて、お食事会ができたのも嬉しい想い出です。
この制作チームでまたご一緒できるようこれからも精進します



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井筒日美(いづつ・ひみ)プロフィール
作詞家。大阪府出身。龍谷大学法学部法律学科卒業後、一般企業を経て柴咲コウ「あどけない温もり」でデビュー。タッキー&翼『SAMURAI』(共作)でオリコンチャート週間第1位に。リュ・シウォン、テレビアニメ『曇天に笑う』主題歌、『テニスの王子様』『アイドルマスター』ほか作詞曲多数。また、<a href="http://www.hct.zaq.ne.jp/ayune/" target="_blank">上園彩結音</a>名義でも『薄桜鬼』シリーズなど、J-POP、アイドル、アニメ・ゲームまで幅広い音楽を手がけている。
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