【恋夢】short story☆十四日月 | カンタ印  元気印

カンタ印  元気印

日々の出来事、思った事などをとりとめもなく...

初めて訪ねた部屋の表札を確かめると、持ってきた紙袋をドアノブに引っ掛けた。


『こんなに近くに住んでいたのね…』


ひょんな事で知る事となった今のあなたの部屋。


それは意外にも歩いてでも行けるほどの距離にあった。


いくら利用駅も路線も違うからとはいえ、こんなに近くに居て、よく今まで会わなかったものね…。




このひと月の間に必要に迫られ、彼と何回か連絡を取り合った。


花火大会の夜に短く言葉を交わして以来の会話。


何かが変わるかと思ったけれど、でも何も変わらなくて、


あなた自身もやっぱり以前と変わっていなくて、


何かが変わったとしてもまた繰り返すだろうというあきらめにも似た予感…。


必要がなくなった後、連絡はまた途切れた。


あなたに再会してからざわつき出した心の中で繰り返される『もしかしたら…』と『やっぱり…』


ひとりでは答えの出ない問いに、考える事を意識して忘れるようにしていたこの頃。


それなのに…


衣替えのついでに始めた衣類の整理、出てきたあなたのお気に入りのシャツ。


もうココにはあなたの物は何もないと思っていたのに…。


旅先で一目惚れした結構なお値段のこのシャツのせいで あなたの貧乏旅行は極貧旅行になっちゃったのよね?(笑)


丁寧に大切に着ていたよね。 これ…ここにあったんだ…。




紙袋の中にはシャツとあなたが大好きだったエビフライ。


どうして?何でだろう?急にあなたに食べさせたくなった。


『迷惑だったかな…』 今頃になって、そんな事が頭をよぎる。


見上げた空には今日も月。


この月の満ち欠けのように いろんな想いをこれからも繰り返すのだろうか?


今夜の月は十四日月。 満ちるにはまだ少しだけ足りない。 


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