剛士を押し返そうとした手を、肩を引き寄せた方と反対の手で押さえつけられてしまう。
頭を横に振って抵抗するものの剛士の力に敵う訳もなく…
雄輔君…ごめんなさい…。
涙が溢れた。
私の抵抗が緩んで剛士の押さえつける力も弱まる。
ゆっくりと剛士が近づいてくる気配がして…おでこが触れた。
〈ばぁ~か!そんな顔されたらキスなんてできね~だろ?〉
そう言って離れると、残っていたビールを一気に飲み干す。
〈あ~あ!〉
『あ~あ!じゃないでしょ!悪いと思わないの?』
〈…誰に?優紀?それとも…雄輔?〉
ハッとした。優紀の事は全く考えていなかった。私ったら雄輔君の事ばっかり…。
〈何考えてたか思い出した?(笑)〉 剛士が笑っている。
〈麻紀、自分の素直な気持ちに気づいたら?〉
『剛士…』
〈俺だってお前の事、ずっと好きだったんだぞ。それなのに、優紀の事ばっかり話してくるから…〉
びっくりして剛士を見た。
〈もちろん今は優紀を愛してるし、これでよかったって思ってるさ。
だけど…優紀には悪いけど、麻紀の顔を見る度、複雑だったんだぞ…〉
そう言って私の頭を小突く。
〈俺はもう過去だろ? そんな過去の感情にとらわれて、大切なもの…失くすなよ〉
前を向いたまま黙ってビールを飲み続ける剛士を見ていた。
『剛士…私…』 バックに手を伸ばしながら言う。
〈ああ…。早く行け〉
『ありがとう…』
駆け出す私に剛士がひらひらと手を振っている。
〈これで…これで、やっとホントに諦められるよ…〉
その呟きは私の耳には届かなかった。
雄輔君の部屋に近い駅に着いたものの私は戸惑っていた。
感情が溢れてここまで来たものの会ってどうすればいいんだろう。
雄輔君のところへと向かう事が出来ず、ただアテもなく歩いていた。
さっきから何度も同じ道を通っている。
このまま雄輔君を失うのは嫌…。だけど…。
その時、私の目にあるものが飛び込んできた。
つづく