〈嫌なの?…もしかして?まだ彼と会ってる?〉
『ううん。直樹君とこんな事になって会える訳ないじゃない?』
和美は自嘲気味に笑った。
『それに、直樹君にこんなに優しくしてもらってるのに、そんな裏切るような事…。
…あ…でも…連絡は時々…。まだ…はっきりと別れた訳じゃないから…。やっぱり…酷いね』
和美が俯いた。
〈忘れられないの?〉
剛士の言葉に和美が頷いた。
『今は…まだ…ね(笑)』顔をあげてそう言うと、剛士を見て穏やかな顔で笑った。
〈和美…ちゃん?〉
『分かってるの。彼とはもう気持ちが離れちゃってる事…。
自分が直樹君に惹かれ始めてる事も…。
このまま直樹君の胸に飛び込めたらって…思う。
直樹君の事…きっと好きなの。とても大切に思ってる。
きっと、これからもっともっと好きになる。もっと大切で愛おしくなる。
でも、今はまだ心の中に彼がいるの。…まだ…ダメなの。
こんな気持ちのまま飛び込むなんて、そんな失礼な事…できないよ…』
そう言って、和美は瞳を潤ませた。
〈直樹の事…大事に思ってるんだな〉
『うん。ものすご~~~く!勝手なんだけどね』 そう言って、和美はおどけたように笑ってみせた。
〈だけど…どうすんだ?子供〉
まいったな…というような笑みをみせていた剛士が訊いてきた。
『ん?それは決めてるよ。産むよ』
〈産むって…1人で?〉 あっさりと言ってのけた和美に剛士が驚く。
『大丈夫よ(笑) これでも結構稼いでるのよ。生まれるまで食べてくぐらいの貯金はあるわ。
生まれたらまた働けばいいんだし…』
そう笑う和美に剛士が不安な表情をみせた。
『甘くないのは分かってるつもり。でも…堕すなんてできないよ。何があっても産んで育てる』
決めていた事とはいえ、現実になって1度は揺らぎそうになっていた覚悟がはっきりとしたものになっていた。
〈子供に恨まれるかもよ?(笑)〉
諦めたように剛士がそう言って笑った。
『かもね(笑) でも、直樹君の子よ?きっと優しい。いつかはわかってくれるわ』
そう言って、愛おしそうにお腹に手をやった。
〈もう1度…訊くけど、直樹の事は大切に思ってんだな?〉
『うん。愛してるか?って訊かれたら、今は自信ないけど…
でも、大好きだし、とっても大切に思ってる。
何があってもね…この子がいたら私、この先、頑張って行けると思うの』
〈そうか。だったら…〉
剛士の視線が和美の先を見ていた。
『ん?』
〈だったら、何の問題もねぇ~よな?な?直樹?〉
剛士の視線の先に直樹が立っていた。
つづく