和美ちゃんの顔からはさっきまでの艶かしい女の顔は消えていた。
僕の知ってるいつもの和美ちゃんだった。
泣きじゃくる彼女に気持ちが溢れて抱いてしまった。
和美ちゃんを泣かせるような男なら奪おうと思った。
彼を忘れさせてみせる…と。
僕の気持ちは決まっている。だけど、和美ちゃんは?
抱いてしまった事、性急すぎはしなかっただろうか?
和美ちゃんの気持ちを考えるとよかったんだろうかと急に不安になった。
『ぅん…』 身動きをして和美ちゃんがうっすらと目を開けた。
僕と目が合う。
『直樹君…』 そう呟いた和美ちゃんは僕の胸で再び眠りに落ちた。
朝の光で和美は深い眠りから目をさました。
包み込まれるような安心感に暫くぶりでゆっくりと眠った。
でも目覚めて、その腕が誰のものだったかを思い出す。
直樹はどちらかといえば細いほうだけど、鍛えられた腕と胸は逞しかった。
2人とも野球をやっていたって言ってたっけ?
雄輔の記憶とどこか重なる。
でも似ている所はあっても、それは和美が馴染んだ感覚と香りではなかった。
今いる腕はいつもとは違う男のものだった。
眠りから醒めて現実に戻る。
その現実に寂しさを感じるのに、包み込んでいる腕の温かさを心地よいと感じてしまう。
直樹の優しさに甘えてしまったけれど、抱かれて直樹を求めてしまったのも事実だけど…。
後悔はしていない。だけど、直樹君はどうなんだろう?
そんな事を考えて、和美はそっと直樹の腕を抜け出そうとした。
和美ちゃんの起きた気配に僕も目を覚ました。
何を思っているんだろう?
腕の中の和美ちゃんを思いながら、いろんな想いを巡らせていた。
僕の腕を抜け出そうとした和美ちゃんを眠った振りをしたまま抱きしめる。
一瞬戸惑った彼女の身体からすっと力が抜けた。
僕の名を小さく呼んで再び僕の胸に収まった。
しばらくして静かな寝息をたて始めた彼女に僕も同じく眠りに引き込まれていった。
つづく