あれから数年の月日が流れていた。
『楽しんできてね』
そう言って結衣は穏やかな笑顔を俺に見せる。
『帰って…くるよね…』と不安気に訊いてきたあの日の結衣はもういない。
「明日の晩飯は一緒に食おうな♪」軽くキスをしてそう言うと俺は部屋を後にした。
菜々の元から戻った日、俺は結衣の部屋を訪ねた。
「ただいま」
そう言った俺の言葉に安心したように笑うと、
『…お帰り…なさ…ぃ…』と言って結衣は涙を溢れさせた。
手を伸ばし、濡れた頬にそっとふれると結衣が俺の胸に飛び込んできた。
「…心配すんな。これから…ずっと…ここにいるから…」
頷きながら泣きじゃくる結衣を抱きしめた。
いつもテンションが高くて、こちらの気持ちなんてお構いなし…。
そんな結衣は俺と一緒にいる間に出来てしまった虚像なのかもしれない。
結衣を気遣う事もなく気持ちのままを態度に出していた俺。
いちいち反応していたら身が持たなかったのだろう。
鬱陶しく感じる事もあったけど、本当はそんな結衣に助けられていた。
『結衣…ありがとな…』
それから…ごめん…。
再び菜々に出逢って、そして気づいたいろんな事。
過去にばかりしがみついてちゃ幸せにはなれない。
過ごした時間を無駄にしない為にも前を向いて進んでいこう。
俺は結衣と生きていく。笑って生きていく。
だから、菜々も俺がいなくても笑っていて…。
「菜々?本当に1人で大丈夫?やっぱりついていくよ」
『もう…』
私はため息をついた。
『何度も言ったでしょ。向こうにはおばさまもいらっしゃるし大丈夫だから(笑)』
それでも、まだあれこれと心配をする彼に『ちゃんと仕事に行きなさい!』と一喝すると拗ねてしまった。
そんな彼を見ながら『変わったな~(笑)』と思う。
いつも大人で穏やかだった彼が今ではどちらが年上か分からないような時がある。
今の彼が本来の彼だったのかもしれない。
私の態度が彼を不安にさせ、ずっと無理をさせていた。
雄輔君と再会した事で初めて知った彼の想い。
…そして気づいた自分の気持ち。
雄輔君と別れ戻ってきた私に彼は黙ったまま首を横に振った。
「…いいから。何も話さないで…」
まるでそう言っているような優しい笑顔に涙が溢れた。
『ありがとう』
そう言った私の唇は『ごめんなさい』の言葉を言う前に塞がれていた。
いつ以来だろう?
校庭に高校時代の懐かしい顔が集まっている。
シンジや他の仲間と昔話に花を咲かせていた。
『雄輔君?』
その声に振り向くと、大きなお腹を抱えた菜々の笑顔。
「おうっ!久しぶり!」
笑顔であげた俺の左手の薬指にも指輪。
季節は俺が初めて菜々を意識したのと同じ季節。
笑いあう2人の上に桜の花びらが降り注いでいた。
おしまい
さぁ~、飲みに行ってきまふ♪( ̄▽+ ̄*)