隣に座り、カップの1つを渡す。
無言でココアを飲んでいた和美ちゃんの目から涙が溢れた。
『…ぅ…っく…』
下唇を噛みしめたまま声を出さないように泣いている。
そんな和美ちゃんを引き寄せるとそっと胸に包み込んだ。
『ごめ…な…さぃ…』
泣きながら謝る和美ちゃんが切なかった。
「どうして?どうして…いつも謝るの?僕、謝られるような事…されてないよ。
僕の方こそこんな事になって…ごめん…なさい」
和美ちゃんが必死に首を横に振っている。
しっかりしていていつも明るかった彼女の弱い姿をあの日初めて見た。
それ以来、何回か見たそんな和美ちゃんはいつも彼の事で泣いていた。
だけど…今日は僕の事で泣いている。
何からどう話せばいいんだろう?
そう思いながら、和美ちゃんが落ちつくまでただ抱きしめていた。
『赤ちゃんが出来たかもって気づいた時ね…』
少し落ちついた和美ちゃんがポツリポツリと話し出す。
『どうしよう?って思ったの。
そんな事になったら、直樹君まで巻き込んじゃう…迷惑かけちゃう…って。
でも、不思議と堕ろす事だけは考えられなかったの。
…どうしてかな?(笑)』
僕の胸から離れると、僕の目をじっと見て言った。
『私…産みたいの。ダメかな?』
迷惑かけないようにするからと言う彼女の言葉を遮った。
「僕が!僕が…一緒じゃダメかな?」
和美ちゃんが困ったような顔になる。
「和美ちゃんの気持ちはさっき剛士さんに話しているのを聞いて知っている。
僕が一緒にいたら負担になる?でも…それでも…」
もう1度和美ちゃんを引き寄せた。
「僕は傍にいたい。ダメ…かな?頼りないかもしれないけど、一生懸命守るから、だから…」
『いい…の?』涙声でそう言ってくれた彼女に頷いた。
「急がなくいいから。だから、1人で産むなんてそんな悲しい事、言わないで…」
『あの日…』
「ん?」 腕に抱きしめた和美ちゃんの囁くような小さな声に、
『初めて…直樹君と2人だけで食事した日…』
「うん?」 じっと耳をこらす。
『直樹君に愛される人はきっと幸せねって言おうとしたの』
別れ際に何かを言いかけて止めたあの日の和美ちゃんを思い出した。
初めて結ばれた日のように直樹に包まれて眠りにつく。
『直樹君、私、幸せよ。ありがとう』
直樹の心臓の鼓動を聞きながら、安心した和美はいつしか穏やかな眠りへと引き込まれていった。
つづく