【恋夢】好きと言えなくて…11 | カンタ印  元気印

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『何処に行くの?』 

行き先も伝えないまま電車に乗った僕に和美ちゃんが訊いてくる。

「ん?内緒♪でも、きっと喜ぶと思うんだけど…」

電車とバスを乗り継いで、やがて、テッペンの一部が大きな半円球状になった建物が見えてきた。

『あの建物…』 そう呟いた和美ちゃんに黙ったまま頷いてみせた。

以前、和美ちゃんが旅先で見た満天の星空の話をしてくれた事がある。

子供の頃、田舎の小さな海辺の町に住んでいた事があって、

そこで見ていた星空を思い出したと懐かしそうに言っていた。

『天の川なんかもくっきり見えて、気持ち悪くなるくらいの星の多さなのよ』

気持ち悪くなるくらい…綺麗さを伝えるのに何だか似合わない表現でその時は笑ったものだけど…。

最近、よく夜空を見上げる和美ちゃんを見て、その星空を思い出してるんじゃないかって思っていた。

「懐かしい星空が見たいんじゃないかと思ってね」

そう言ってから付け加えた。「本物は無理だけどね(笑)」



いろいろ調べて、少し遠いけどここを見つけた。

かなり小さな星まで映し出せるというこのプラネタリウムは、週末にはかなり混みあうらしい。

でも、この日は平日の午後という事もあり、近くの席は空いていた。

2人だけしかいないような気分で満天の星空に酔いしれる。

時々交わす会話の声で、暗い中でも和美ちゃんの弾んでる様子が分かった。

上映が終わって館内が明るくなる。

僕の方を見ている和美ちゃんと目が合った。

『ありがと…』

少しはにかみながら言った和美ちゃんがとても愛くるしくて、

その俯いた横顔に僕は何ともいえない気持ちになっていた。



帰りの電車に揺られながら和美は今日の事を思い出していた。

直樹の優しさが心地いいのに、直樹には素直に甘えられるのに、

でも、まだ雄輔が心の中にいた。…愛していた。

そんな気持ちを直樹も知っているはずなのに…。

先延ばしにしている事が心に引っかかる。

『!』

不意に肩に重みをかんじて我にかえった。

眠ってしまった直樹が和美の肩にもたれていた。

夜勤明けだったものね…。

直樹の優しさを改めて感じて、胸が熱くなる。

こんなに大切で愛おしく思うのに、まだ雄輔を愛してる自分に腹が立つ。

でも、和美は気づいていた。

『仕事が忙しいから』と避けていたのは自分の方だったけど、

雄輔もそれ以上は「会いたい」と言ってこない事に。

雄輔が自分の気持ちに気づいてしまった事を察知していた。

そろそろハッキリさせなきゃね。それに…

和美にはもう1つ気になってる事があった。



和美の降りる駅を過ぎた。

和美は直樹を起こすことなく、そのまま肩を貸し続けていた。

つづく