人目に付きにくい少し陰になった場所に見覚えのある人影を見つける。
「和美ちゃん?」 声を掛けると、和美ちゃんが僕の胸に飛び込んできた。
顔は見えないけど、きっと泣いているのだろう。 肩が…震えていた。
このままこうしている訳にもいかないけど、かといって何処かお店に入る訳にも…
「僕の部屋に行くけどいい?」
頷いた和美ちゃんをタクシーに乗せた。
「彼と一緒のハズなのに…」
嫌な予感がしながら、和美ちゃんからの電話に出た。
『なお…き君…』 か細く震える声でそう言ったっきり彼女が泣きじゃくった。
やっとこの場所を聞きだして、急いでやってきた。
いったい何があったの?
そう訊きたい気持ちを抑えて、しがみつく彼女を抱きしめた。
頭の中には、さっき別れた剛士さんの言葉が繰り返し浮かんでいた。
『今日ね、彼に会ったの。 会社まで迎えに来てくれてね』
僕の部屋のソファーで膝を抱えた彼女が話しだす。
『買い物に付き合ってくれてね、あの服も選んでくれたの』
そう言ってバックと一緒に置かれた紙袋をチラッと見る。
『楽しくてね。直樹君の言うように、やっぱり思い過ごしだったのかな?って、そう思ったの』
その時の事を思い出したのか一瞬だけ嬉しそうに和美ちゃんが笑った。
だけど、すぐに涙目になって唇をかみしめる。
肩にもたれてきた彼女の頭を数日前と同じように撫でた。
「何が…あったの?」 そう訊いた僕に、
買い物の後に食事をした事、トイレに立って戻ると彼が携帯で話をしていた事、
和美ちゃんが一緒だと気づいて相手が慌てて電話を切った事などを話してくれた。
「それで、彼は何だって?」
『何にも…』
「何にも?」
頷いた彼女の目から堪えきれずに涙が溢れ出す。
『ごめん…って。 和美、ごめん…って、そう言って、お店飛び出して行っちゃったの』
1人店に残された和美ちゃんの気持ちを思い、胸が絞めつけられた。
「直樹君?」
突然、両肩を掴んだ僕に和美ちゃんが驚きの声をあげる。
「今度はおでこだけじゃ済まないって言ったハズだよ。覚えてるよね?」
躊躇いの表情を見せながらも、すぐには拒否の態度をとらなかった彼女に強引に口づけた。
つづく