午後遅くに鳴った携帯。
雑誌を読みながら相手も確かめずに出ると、聞こえてきたのは雄輔の声だった。
『え?雄輔?何?どういう事?』
「今そっち向かってるから、支度しとけ。じゃあな!」
私が部屋に居る事を確かめると一方的に言って携帯は切れた。
『何…なのよ?』 しばらく携帯を握りしめたままボ~っとしていたが、我にかえると慌てて支度を始めた。
着替えながら雄輔の弾んだ声に昔を思い出して不思議と楽しい気分になっていた。
『どこ行くのよ?』
走り出した車の中で尋ねる私に「内緒♪」とでも言うように悪戯っ子のような笑みを浮かべ答えない雄輔。
ただ30分も走る頃には、車がどこに向かっているのかが想像できた。
こちらを向いて私と目が合うと、優しい顔で頷いてみせた。
着いた場所は以前雄輔とよく来たこじんまりとしたお店。
2階の正面に海を臨む窓辺の席に並んで座り、軽い食事をした。
車の中もここに着いてからも、仕事の事など当たり障りのない話しかしていない。
当時と変わらぬ海を眺めながら、ここに連れてきた雄輔の真意を量りかねていた。
右手の岬の山影に陽が沈みきる頃、雄輔と店を後にした。
暗くなり始め人が疎らになった砂浜に下りてみる。
吹き始めた風は涼しかったが、砂に残る昼間の暑さが夏を感じさせた。
『夏の海なんて何年ぶりだろ?』 独り言のように言った私に
「そんなに来てなかったの?」 と驚いた表情(かお)でこちらを見る雄輔がいた。
雄輔と別れて以来初めて来た夏の海。
独りになってから来た海は寂しくて、夏は余計に寂しく切ない気がして来る気にはなれなかった。
そんな事、雄輔に言える訳もなく笑って誤魔化すと、雄輔の前を歩き出した。
「真美…」
『ん?』
呼び止められて、後ろを歩いていた雄輔の方を振り向いた。
「…俺…転勤が決まった」 突然の事で言葉が見つからない。
『…そう…いつ…行くの?』 やっとの事でそれだけ訊いた。
「今月中には…」
そんなに早く…? あと少しで会うことも出来なくなっちゃうの?
『こんな…所にいていいの? 荷造り大変でしょ? 奥さん…手伝わないと…』
顔を見ている事ができなくなって、そう言いながら背中を向けた。
「…俺…1人で行く。…離婚…したんだ」
雄輔の声が追いかけてきた。
つづく
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う~~~ん(-""-;) こんな所で切りたくなかった。
私の中では今日で終るつもりだったのに( ̄ー ̄;
1回分にしては長くなりすぎた~(TωT)
…って事で、次回最終回?