その理由が分かったのはあの日…つばさ君が悪戯をして、注意をした時の事。
その日の悪戯は度を越していて、少しきつく叱った。
『いい加減にしなさい!』
私が大きな声を出した途端、つばさ君が激しく泣き出した。
<パパ~!> 慌てて飛んできた雄輔にしがみついて怯えるように震えている。
「大丈夫だ。大丈夫だからな」
背中を撫でながら必死につばさ君をだめる雄輔を私はただ見つめていた。
「ごめん…。ふぅにはまだ話してなかったよな?」
ようやく落ち着いたつばさ君を寝かしつけると、雄輔はゆっくりと話しだした。
つばさ君のお母さんはとても真面目な人だったらしい。
でも真面目すぎるが故に思い通りに行かない子育てに育児ノイローゼになったようだ。
雄輔もいろいろと協力したようだが、ついにはつばさ君に手をあげるようになり、
それがだんだん酷くなり、つばさ君の怪我をキッカケに離婚に踏み切ったという事だった。
「俺がもっと早く決断してたら、こんなに苦しめずに済んだのに」
雄輔はそう言って唇を噛みしめていた。
それから私と雄輔の関係は微妙に変わっていった。
ううん。変わったのは、私。
つばさ君の母親になる事を簡単に考えていた訳ではない。
妊娠も出産もした事のない私が、イキナリの母親業。
大変なのは分かっていた。
でも、雄輔と一緒なら大丈夫!…そう思っていた。
それが現実を目の当たりにして、すっかり自信がなくなってしまった。
覚悟していたはずなのに甘かったんだろうか?
「急がなくていいから」
そう言ってくれる雄輔の優しさまでが重荷になり、私から別れを切り出した。
雄輔はただ一言。「わかった」 とだけ言って、寂しそうに俯いた。
私は携帯を変え、しばらくして今の会社に転職すると、住んでる場所も変えた。
今の会社に移ってしばらくは、新しい事を憶えるのに必死だったけれど、
それが落ちついてくると思い出すのは雄輔とつばさ君の事ばかり。
こんな辛い想いをするんだったら、苦しんでも傷ついてもいいから、手放すべきじゃなかった。
…何度、後悔したかわからない。
やって失敗した後悔よりも、何もしないで諦めた後悔の方が大きいんだって、嫌っていうほど思い知らされた。
《私ね、この結婚、何度諦めそうになったかわからないんですよ。諦めなくてよかった》
お色直しで中座した花嫁さんが話しかけてくる。
そうだった。 決して若くはないこの花嫁さんの今日までの長い道のり。
打ち合わせの時に、そっと教えてくれたっけ。
涙を流す花嫁にハンカチを差し出しながら、私も泣いていた。
『やだ…もらい泣き(笑)』
そう言って誤魔化したけど、花嫁は幸せの涙。私は…後悔の涙。
《私、幸せになりますね》 美しいその笑顔に抑え切れない感情が溢れだした。
お色直しをして再入場までタイムテーブルで25分ある。
『ごめん。ちょっと抜けるね。支度ができたら連絡して!』
花嫁が控え室に消えると、インカムを指差しながら私は駆け出した。
つづく
【恋夢】後悔…3→http://ameblo.jp/himewari0418/entry-10294670333.html
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ん~?前後編でも無理みたい( ̄ー ̄;