親しくなって、雄輔が私を抱きしめてくれて、でも、雄輔も私もハッキリした事は何も言わなかった。
言葉にはしなかったけど、お互い気持ちは通じていると思っていた。
あのまま楽しい時間が続くと思っていたのに、それがあの日・・・
仕事終わりで飲みに行こうと盛り上がり、その日はいろんな部署が入り乱れて、20人程で飲んでいた。
普段はあまり話す機会のない人なんかもいて、ちょっとした親睦会という感じになっていた。
雄輔と私の事はホテルでは知ってる人もいなかったし、私達は少し離れた所で飲んでいた。
(ねぇ咲希、今年入った経理の女の子、知ってる?)トイレから戻った同じ部署の子に聞かれた。
『あ~、あの大人しくて、かわいらしい子?』
(そう。あの子が今、雄輔君に告ってたの、見ちゃった~♪)
近くにいた他の人も加わり、話が大きくなる。そこに2人が戻ってきてしまった。
お酒が入ってた事もあり、悪のりしてみんながからかう。
女の子の方は真っ赤な顔をして今にも泣き出しそうだった。
最初、雄輔は戸惑っていたが、女の子の肩を抱くと、
「オレ達、付き合うことになりました~♪」と、ピースサインを出しておどけてみせた。
女の子はびっくりして雄輔を見たが、すぐに嬉しそうな笑顔に変わった。
雄輔もみんなに冷やかされて、照れくさそうに笑っていた。
〈ここだったよなぁ・・〉 つる兄が車を止めた。道路脇に、海沿いの細長い公園がある。
あの日、どうやって帰ってきたのかは、よく覚えていない。
アパートで、雄輔からの電話を受けた。
『彼女の事、好きなの?』
「分んねぇ。分んねぇけど・・・『オレが守ってやんねぇと』って思った・・・」
胸の奥がズキズキして、泣きたいのに泣けなくて、気づいたら夜中だというのに傘をさしてここに立っていた。
そんな私を通りかかったつる兄が見つけて声をかけてくれた。
〈不良娘、発見~♪何やってんの?(・∀・)〉
いつも通りのノー天気(ごめん、つる兄)なつる兄を見たらほっとして、笑おうとしたのに涙が出てきた。
それから少しして、私はホテルを辞めた。
仕事は好きだったけど、みんなに迷惑かけるのも嫌だったけど、でもどうしても雄輔と彼女を見ているのが辛かった。
マルコポーロはその頃、つる兄がプレゼントしてくれた。
紅茶好きの奥さんが『元気の出る紅茶』だって言ってたからって。
紅茶の力なのか、つる兄の気持ちが嬉しかったからなのかは分らないけど、少しだけ元気になれた気がした。
私はアパートからそれほど遠くないホテルで働き始めた。
その後も雄輔は時々はサーフィンに来ていたようだが、つる兄が顔を合わせなくて済むよう気をつけてくれた。
やがて、同じホテルで働く人とお付き合いも始めた。
このまま会わないでいれば、いつか雄輔の事も忘れられるんじゃないか?そう思い始めていた。
ところが、やっとそう思い始めた頃、雄輔がホテルを辞め、あの喫茶店を始める為に移り住んできた。
また私の心の中がざわつき始めた。
〈皮肉だよなぁ。今では雄輔がマルコポーロ淹れてんだもんなぁ・・・〉
『そうね・・・』 私は少し笑った。
〈咲希ちゃん、ホントは辛ぇんじゃね~の?雄輔といるの〉
『心配しなくても、大丈夫だよ。・・・もぅ、慣れたから・・』
後の方の言葉はつる兄には聞こえなかったようだ。
つづく
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もう随分と昔になりますが、こんなカンタでも元気がない時期がありました。
そんな時、カルチャー教室で紅茶のお勉強をしていた友が、
「先生が元気の出る紅茶だって言ってたから」と持ってきてくれたのがマルコポーロでした。
当時はホントお世話になったさ~♪(・∀・)
最近は忘れてたんだけど(笑)、先日、思いがけず再会したのでエピソードに使ってみました。