翌朝、目覚めると雄輔君はいなかった。
『ひどい顔・・・』鏡の中の自分を見て、つぶやいた。
剛士との約束に間に合うように仕度をして出かける。
お墓の前で剛士が待っていた。
ふたりで並んで手を合わせる。
「夏海、昨日泣いた?目が腫れてる」
お墓参りのあと一緒に食事をしている時、剛士が聞いてきた。
「またひとりで泣いたのか?」
どう答えたらいいものかと思い黙っていると、剛士から思いがけな言葉が返ってきた。
「雄輔か?」
『どうして・・・?』驚いて剛士を見る。
「やっぱりそうか」
『どうして・・・?』私はもう1度聞いた。
「夏海・・・。ずっと一緒に生活してたんだぞ、わかるさ」
「雄輔の前で泣いたのか?」私はうなずいた。
「雄輔の事、好きなんだな」今度は答えなかった。
大きくため息をついた後、剛士が話し出した。
「夏海、お前が初めて俺の前で泣いた時の事、覚えてる?
気の強いお前が泣いたもんだから、俺びっくりして、でも嬉しくて。
他のヤツの前では絶対に泣かないのに、俺の前では本当によく泣いたよな。
俺はそんなお前を守りたかったんだ。・・・できなかったけどな。
あの子の事故の後、俺、自分の事だけで、気づいたらお前、俺の前で泣かなくなっていた。
それに気づいた時『あ~、もうダメだな』って思って、離婚切り出したんだ。
お前は自分の事、責めてたみたいだけど、違うんだよ。
そこまでお前を追いつめた自分自身が許せなかったんだ」
そこまで言うと、もう1度聞いた。
「雄輔の事、好きなんだろう?」私はうなづいた。
「だったら・・・」
『怖いのよ。若い頃と違って、傷ついたら立ち直るのに時間がかかる・・・立ち直れないかもしれない。怖いのよ』
「そしたら俺のとこ来いよ」
『剛士?』
「俺はお前が幸せになるまでは1人でいる。そう決めてるんだ。だから安心しろ!な?」
剛士は仕事があるからと帰っていった。
帰り際、「雄輔、今日は出張の報告だけで、明日まで休みだから、ちゃんと話しろ!」と言って。
つづく