膵臓がん

膵臓がんの90%は膵管という膵液(という消化液)を運ぶ管の細胞が悪性化した膵管癌です。手術が根治には欠かせないと言われていますが、進行が速く、早期発見が難しいため、致死率が非常に高く、罹患数と死亡数がほぼ同数という非常に予後の悪い疾患です。
暗黒の癌と言われる所以です。

でも、あきらめる必要はありません。

この1年で 状況はかなり変わりました。その最大の理由は抗がん剤の大きな進歩です。昨年から保険適応となった、アブラキサン+ジェムザール(nPTX+GEM
あるいは FOLFIRINOX5FUCPT-11L-OHP)は奏功率も高く、驚くほどよく効く人もいます。

膵臓癌で根治が望める手段として、手術の他には重粒子線治療があげられますが、重粒子線治療は、非常に強いビームなので、消化管にあたると穴が開いてしまう(穿孔してしまう)可能性があり、消化管との距離が5㎜以上必要です。

胃に5-6㎝接している腫瘍で、慰める意味で化学療法をしてもし小さくなって消化管との距離が5mm以上になったらまたいらっしゃってくださいとお話しした患者さんがいました。
数か月後来院し、造影CTを見てびっくり!

腫瘍は1.5㎝程度となり、胃との距離は1㎝くらい確保できていました。腫瘤が結節になったというイメージです。この患者さんは、高齢でしたので重粒子線治療だけになりましたが、手術も可能なほどになりました。この患者さんが nPTX+GEMでしたが、副作用などもあり、治療をskipしながらでしたがこのくらい小さくなるものです。

その他、FOLFORONOXあるいは GS療法(GEM+TS-1)で同様に重粒子線ができるようになったり、また、重粒子線治療の他手術もできるようになった患者さんもいました。

なぜ、重粒子線治療ができるようになったのに、手術をするのでしょうか?

それは これまでの成績をみると重粒子線治療単独の場合と、手術を加えた場合では圧倒的に後者の方が成績が良かったからです。
前者は2年生存率が50%
後者は5年生存率が50%
残念ながら、重粒子線治療単独では再発がしばしばおこります。これは膵臓が消化管に取り巻かれているため他の部位に比べて線量増加がこれまでできなかったからです。しかし、今後は放医研で開発された回転ガントリーによってより細やかな照射が可能となり線量増加が見込めます。また、重粒子線治療は、再発してもあるいは他の放射線療法で再発した場合でも、消化管との距離が5㎜以上離れていれば再照射できる可能性があります。


お話を戻します。非常に効果的な抗がん剤が出てきたことが大きな朗報であるというのは、手術や重粒子線治療などの局所療法ができるようになるという意味だけではありません。


一番重要なポイントは、遠隔転移のコンロールです。
これまでの、成績では手術できたケースでも5年生存率は12%程度でしたようやく手術ができる程度のstagea の占める割合が多いということもありますが、すい臓がんは早期から遠隔転移(特に肝臓転移)あるいは後腹膜進展をしているケースが多いことが 予後不良の原因となっています。重粒子線治療も手術もできた患者さんでもその半分が5年後には亡くなっている理由は 見えないけれどすでに存在していた微細な遠隔転移によるものです。

これまで、膵臓癌の化学療法はS-1GEMくらいしかありませんでしたから、遠隔転移を完全にコントロールすることは難しかったのですが、これだけ効果があるレジメンであれば術前(と術後)に使うことで遠隔転移を完全コントロールできる可能性がでてきます。

以上、膵臓癌の①でした。

膵臓癌②では、遠隔転移のコントロールについて もう少し詳しくお話しします。



Smile Girls 患者会を応援します
↑クリック