誰か…助けて!
誰か…うんん…お願い!智くん僕を助けて!

掴まれた腕がジワリと痛む。
怖くて、怖くて泣けてくる。



僕は、人から迫られたり数人に囲まれたりするとパニックを起こし、情けないけど…その場から逃げることも動くことも出来なくなる。

そんな僕の態度を知ってか?智くんが、いつも助けてくれる。

(ほかのヤツに翔ちゃんが助けられるなんて!おれからしたらあり得ねえもん!)



初めて助けられたのは、いつだったかな?
幼稚園児の頃が最初かな?

それとも…もっと前?

(おれ的には翔ちゃんが生まれた時からずっと守ってるつもりだけど?)


智くんには僕が小さい頃から何かと助けてもらってるけど、僕がパニックに陥って助けられたのは…おそらくあれがそうだとおもう。

あの日もこんなふうに追い詰められたんだ。

今回と違うのは、女の子数人に囲まれ責められたってことだ。

今回同様…どんどん壁際に追いやられた。

たしか、その中の誰かが僕に告白してくれたんだけど、僕は智くんがすきなわけで…だけどその事を言えるはずもなく黙っていたら、いつの間にか囲まれてた…気がする。

智くんのことが好きだとは言わなければいいのか?
好きな人がいると伝えたらわかってもらえるのか?
そうおもって伝えたんだ。

『僕は、好きな人がいるから…君とは付き合えない。』

と、恥ずかしさもあったし、なんでこんなことを名前も知らない女の子にわざわざ教えてやらないとダメなのか?という気持ちが働いて、おもっていた以上に小さな声だった。

(この時…おれ一瞬時が止まったもんな。翔ちゃんには好きな人がいるのか…告る前から、おれ失恋?てさ。)


そしてそう言い終わるか終わらないかのタイミングで肩を抑えられ、数人の女の子たちが凄く近くに居て女の子特有のニオイとかも嫌で思考が停止して動きがフリーズした。

気がついたら保健室のベッドのうえで傍には智くんが居た。

智くんが居てくれたことに安堵して僕は泣いてしまった。

(保健室まで運ぶのさすがに大変だったけど、意識がない翔ちゃんをなんとかしなきゃ!ってなんとか運んで、保健医の先生も「様子を見ましょう。」しか言わねえから不安だったな。でも目覚めてくれてホッとしたし、おれを見て泣いちゃう翔ちゃんめちゃくちゃかわいかったなぁ♡)



あとから聞いた話では僕は女の子たちに囲まれて肩を掴まれた瞬間に、倒れたらしく女の子たちも驚いたみたいだ。

智くんは、わーわー騒いでる中心に僕が居るのを目にして助けてくれたらしい。

担いでくれたのか?
いわゆる…お姫様抱っこをしてくれたのか?は教えてくれなかったけど、これものちに僕に告白した女の子が謝りに来てくれて「大野さん?って人が櫻井くんをひょいってお姫様抱っこして保健室に運んでたよ。」と教えてくれた。

ちょっと小っ恥ずかしかったのと、残念な気持ちにもなった。
記憶がある時にされたら僕はどうなっちゃうんだろ?

僕が泣いてるのを見た先生はお迎えに来てもらおうと連絡したようだった。

ただ僕のママとパパには連絡がつかず機転効かせた智くんが、おばさんに連絡するようにお願いして、優しいおばさんがお迎えに来てくれたんだ。