いつもは犬たちの幸せについて考えていますが、別の動物のこともご紹介したいと思います。お馬さんも、昔から人間がお世話になってきた動物です。でも、知られていませんよね。小学生くらいの年齢で、「いらない」って言われること…

 

サラブレッドという存在

これまで、馬にはまったく縁がありませんでした。競馬に興味はないし、乗馬を習うような家の出身でもなく…。たまに観光牧場で見る、おっきくて優しい目が印象的だったくらいでした。

 

大きくて優しい目が印象的

 

そんな私でも、「サラブレッド」と呼ばれる種類があることは知っていました。

 

家柄が良いという意味で、「〇〇界のサラブレッド」という表現もあるように、エリートみたいなイメージがあると思います。英語では "Thoroughbred" と書きます。thoroughは「完全な」とか「徹底的な」を意味し、"bred" はbreedの過去分詞で「繁殖させる」とか「品種改良する」という感じでしょうか。つまり、「完璧を期して創られた品種」がサラブレッド。

 

何のために "創られた" かと言えば、競争ですよね。サラブレッドは競走馬として、すっごいお金を稼ぐ(正確には、馬主さんにお金を献上する)らしいイメージは持ってました。お金持ちの馬主さんの手厚いケアのもと、レース以外は幸せに過ごしているんだろうって思ってました。

 

こんなイメージだった競走馬の日常ですが…(写真はイメージ)

 

トレーニングの後、温泉のシャワーを浴びている様子をTVで観たことがあったような気がします。「うらやましい」と思ってました。

 

が…

 

サラブレッドの寿命は?

さて、ここで問題です。そんなサラブレッドたち、寿命はどれ位でしょう?

 

犬や猫みたいに15~16歳くらい?
✘です

じゃぁ、人間みたいに80歳とか?
それも✘です

正解は…
はっきり分からない

 

みたいです…。

 

去年、ちょっとご縁があって「ハリマブライト」という元・競走馬の一口共同里親になりました。大したことはできませんが、少~しだけ寄付をしてご飯代などの一部に活用していただきます。遊びに行って、会うことができるのが嬉しいんです。

 

ハリマブライト(写真:引退馬協会)

 

そのハリマが、先日、ケガで亡くなりました。この5月に27歳のお誕生日を迎える予定でした。ということで、サラブレッドは何もなければ30歳くらいまでは元気で過ごせそうです。

 

「うま娘」というスマホゲームが去年話題になりましたよね。そこにも登場する「ナイスネイチャ」は、北海道の養老牧場で余生を過ごしています。彼は、4月16日に34歳のお誕生日を迎えました。

 

 

ナイスネイチャ(写真:引退馬協会)

 

「セカンドキャリア」は誰も気にしない

んで、どうして平均寿命がはっきりしないのか…。
 
日本では、毎年7000頭くらいのサラブレッドが生まれるそうです。そのうち約5000頭が、日本中央競馬会(JRA)に登録されるらしいです。競馬にデビューするわけですね。その時の年齢が2歳ほど。

 

中央競馬会の華やかな競馬場

 

で、ほぼ同じ数の馬たちが毎年、JRAの登録を抹消されます。決まった年齢はありませんが、早い馬は4歳ほどで引退だそうです。要は、"成績=お金" が期待できない。
 
中央競馬で超優秀な成績を残したオスの馬は、種牡馬(しゅぼば)として第二の「馬生」を過ごすことがあります。いわゆる種馬ですが、数は決して多くないことは想像できます。

 

地方競馬に転籍する馬もいるそうですが、いずれにしても10歳を超えるとレースに出るケースはほとんどないそうです。

 

全体の約6割は、障害競技を含めた乗馬用に転向するとも言われています。

 

乗馬に転向し、その後は?

 

でも、そうした仕事も終わりは必ずやって来ます。その後の行方に関する記録は存在せず、馬たちの余生~最期はほとんどの場合、誰も知らないそうです。また、「セカンドキャリア」が見つからない馬たちが、どこへ行くのかも不明…。

 

サラブレッドの寿命に関するデータがないのは、こういうことだそうです。

 

小学校で見切りを付けられる馬

仮に馬の寿命が30歳だとします。人間の平均寿命を80歳とすると、馬は人間の2.7倍の速さで時間を過ごすことになります。とすると、競馬にデビューする2歳は、人間に置き換えると5.3歳。まだ幼稚園児です。

 

競馬デビューはこんなイメージ?

 

4歳で引退するとしたら、小学校3~4年生で見切りを付けられるわけです。

 

ある調教師の方によれば、「もうちょっと時間をかけてあげれば、もっと良くなる」と思う馬もいるそうです。でも、引退させなければいけない…。「馬主さんに迷惑をかけるので」、仕事と割り切って諦めなきゃいけないというジレンマがあると言います。

 

板挟みのジレンマ…

 

競走馬が生まれ育つ牧場には、馬の出産から毎日のお世話をする厩務員さんたちがいます。そうした方々も含め、競走馬に関係する皆さんは同じような悩みを抱いているようです。

 

馬たちの体温や息づかいを感じながら、日々接しているわけで…。

 

馬の体温や息づかいに触れる毎日

 

色々な思いを 仕事として"飲み込み" つつ、「今ここ」で過ごす時間を、快適で充実したモノにすることに集中しているのだろうなと想像します。

 

競馬業界の現状

経済的に余裕のある方々や団体が、こうした馬たちのセカンドキャリアを考えてあげれば良いと思います。去年一年間の馬券の売り上げは、中央競馬だけで

 

3兆911億1202万5800円!!!

 

莫大なお金を持っている競馬業界

 

10年連続の増収だそうです。

 

「さんちょう円」ってイメージが沸きませんが…今のレートで換算すると約230億米ドル。これ、国家予算の多くを占める税収で比較すると、32位のルクセンブルクと同じレベルです(2019年の国家税収が約277億ドル)。

 

小国なのでなじみはないかもしれませんが、ドイツやフランスと国境を接する、お金持ちの多い国です。

 

授業でオランダとベルギーを合わせて「ベネルクス3国」って習いました

 

で、社会が動物たちの命に目を向けるようになりつつある昨今、JRAはやっと少しづつ動き出したようです。「引退競走馬事業費」を計上するようになりました。サポートしている頭数はごくわずかで予算も驚くほど少ないですが…。

 

(心の声: TV CM に金かける必要あるか?)

 

まぁ、そこはあまり突っ込まず ^_^ 競馬界全体で、馬たちの命に対する向き合い方が変わるきっかけになるでしょう。

 

人間の夢

競走馬のセカンドキャリアについて、30年にわたって取り組んでおられる方もいらっしゃいます。ハリマブライトも余生を過ごした牧場のオーナーさんは、「引退馬協会」(認定NPO法人)を運営されています。

 

引退馬のケアを始めた頃は、競馬関係者も「引退馬って何?」と言う反応だったそうです。競走馬の "その後" には、触れるべきではないような空気も感じたんじゃないかな…と思います。

 

でも、長年の地道な活動の結果、最近ではJRAのレースで引退馬を紹介するイベントも行われるようになったそうです。

 

考え方は色々あると思いますが、競馬があるから馬を知り、馬を好きになる人も少なくないでしょう。愛情をもって馬たちの世話をし、その仕事で生計を立てている人々もたくさんいます。

 

馬がいるから馬に惹かれ、馬がいるから存在する仕事もある。大切なのは、1つ1つの命へのレスペクト(敬意)では?

 

引退馬協会さんは、馬との触れ合いの機会を通して、まず "馬のすばらしさ" を一人でも多くの人に知ってもらう活動をされています。何かを否定することなく、現在のワク組みの中で人と馬がもっと良い形で共生できる道を探す姿勢が感じられます。

 

代表の方のコメントが、とても心に響きました。犬や猫も、まったく同じですね。犬や猫、その他の命に関する取り組みも、こんな姿勢なら、もっと社会全体に受け入れられるような気がします:

 

「競走馬は、人間が夢を描きながら創り出した馬たちです。自然に生まれてきたわけではないのです。だから、人間がその最後まで責任を持つことが必要だと思っています。少し時間はかかりそうですが、それが当たり前に思えるときが来るまで、諦めずに行きたいと思います」

 

 

 

正解は無いですが…

最近も、ドーベルマンを巡って悲しくなる出来事がありました。色々、いろいろ思うところあって、「殺処分ゼロ」や「保護犬・猫」については情報発信しないことにしています(ペットショップの「保護犬・猫ビジネス」は除く)

 

 

 

殺処分数が減ることも、保護される命が増えることも良いことに違いありません。目的を達成するまでの、道しるべの1つとして設定する大切さも理解できます。でも、たまに「保護犬を迎えるのが当たり前の社会に」的な表現を目にします。

 

目指すべきは「保護犬」が存在しない社会では?

 

 

本当に目標とすべきは「人間がその最後まで責任を持つ」社会、つまり「終生飼養」があたりまえの世の中だと思います。何かを極端に単純化して、何かを強く否定することが、そうした社会を創るための方法なのでしょうか?

 

方法も手段も、それから表現の仕方も、心を尽くして良く考えることが大切ではないでしょうか?

 

 

なんて事を言いつつも…ダークサイドから一言:
某・大手ラーメン店チェーンの社長さん、わずか数年間で10億円以上をかけて競走馬をたくさん購入したそうです。競走馬を持つのは「勝つことが大前提」だそうです。外国人を違法就労させて書類送検されたり、独占禁止法違反の疑いで調査を受けたりしているようで、勝負に手段は選ばないようです。これは彼の生き方ですが、命を道具の1つと考える方の作る食事。果たして美味しいのでしょうか?