保護犬や保護猫が話題に上ることが増えた気がします。ボランティア団体さんだけでなく、お店などでも里親探しに取り組むケースが出てきましたよね。そうした取り組み自体に、もちろん反対意見はありません。

 

その一方で、「さらなる搾取のビジネスモデル」と思うような仕組みが「雨上がりのタケノコ」の様に出てきた気がします。特に、規模の大きな会社がバックについているトコロ。今回から、ちょっとそんなことを見てみます。

 

しつこいようですが、ペットショップそのものに全面的に反対なわけでは無いんです。やり方だと思います。そういった意味からも、「おかしい」と感じたことは、冷静に見て・議論して・改善策を見つけていければ、動物たちを含め、みんながHappyになることにつながるような気がします。

 

繁殖を卒業?

昨年末、石川県金沢市に「"繁殖を引退した犬と猫"を専門に取り扱う」とするショップがオープンしたのをご存じの方も多いでしょう。以前も独特の販売システムをご紹介した、大手企業による運営です。

 

子犬・子猫の販売を行う企業の責任として、ブリーディング(繁殖)を卒業した犬猫と新しいご家族のマッチングを専門に行う店舗の1号店

 

もっと早くからやるべきだったとは思いますが、ひとまず、この考え方「自体」に異論はありません。ほかにも、ひめりんごをお迎えしたペットショップを運営する会社(の関係者)が始めた団体もあります。「獣医師賛同」(?)を謳い文句に、「里親」を待つ犬猫の数は2000頭を超えています。

背景にある法改正

この背景にあるのは、2019年に施行された

 

動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年6月19日法律第39号)

 

つまり、改正愛護法です。この法改正を受け、2021年6月には

 

業者が動物の飼育などにおいて守るべき基準(正式名称:「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」)

 

が環境省より公布されました。俗に言う「数値規制」です(詳細については、こちらをご覧ください)。

 

 

目的は、

 

「必ず守らなければならない基準(レッドカード基準)」を具体的にして「悪質な事業者を排除する」

 

ことです。

 

 

事業者には分かりやすく、
自治体はチェックしやすいよう

 

に配慮されています。繁殖に使われる犬と猫の出産年齢や、従業員一人当たりの飼育頭数など上限が設けられました。

 

ペット業界の反発

これに対して、繁殖業者やペットショップなどの事業者は反発しました。子犬や子猫の「競りあっせん業」の元締めとも言える「ペットパーク流通協会」の上原勝三会長は、この省令を「改善」するよう求めています。

https://www.zenshoren.or.jp/2021/02/01/post-7734

 

環境省「中央環境審議会」の「動物愛護部会」に委員として参加していた「全国ペット協会」の脇田亮冶専務理事が、環境省に強い口調で問いかけたこともあります。数値規制を遵守すると、繁殖を引退する犬と猫が全国でおよそ13万頭にのぼるとし、

 

「この行きどころのない、超過した犬猫はどのようになるのでしょうか?」

 

「動物愛護部会」は毎回、現場で傍聴していたので、その様子は今でも印象に残っています。興味のある方は、同省が公開している議事録を見てください。http://www.env.go.jp/council/14animal/57_2.html

 

根深い課題

この会議に、同じく委員として参加していた成城大学法学部教授の打越綾子博士が、過去の経緯も振り返りながら歯切れの良い発言をしています:

 

「脇田委員のご意見の中で、その不適正な事業者が残ってきてしまったのは、行政の放置にも責任があるのではないかというご発言があったことについて、それは幾ら何でも言うに事欠いてではないかと思うので、一言申し上げたいと思います。この動物の取扱業者の問題というのは別に、この1年、2年で始まったことではなくて、2005年の法改正の時に」は、

 

既に議論が開始されていたはずだ…と。要は、十分な時間があったにも関わらず、この問題を放置していた業界に「モノ申した」形です。

 

打越教授は、多頭飼育崩壊や自然環境の保護など幅広い分野で研究や活動をされています。

 

 

専門である法律だけでなく「現実」にも目を向け、バランスの取れた発言をされる印象があります。例外的に熱のこもったトーンから、この問題の根深さを垣間見た気がします。

 

猶予期間と言う落としどころ

数値規制では、ケージサイズや運動場など飼育スペースに関する基準も決められましたが、結局、主な項目には猶予期間が設けられました。交配年齢については1年後(つまり令和4年6月から)、飼育頭数の上限は3年後からの完全施行になります。

 

 

動物愛護団体などを中心に批判の声もありました。確かに、「理想」にはまだまだでしょう。でも、国としては事業者に対するある程度の配慮が必要との現実的な判断だったと思います。

 

業界「なりの」法改正対策

ということで、冒頭にご紹介した大手ペットショップ運営企業による「1号店」は、改正愛護法を受けての取り組みです。繁殖から引退した、つまり、

 

繁殖業者から「もう、いらない」と言われた犬や猫

 

を引き取るための対策です。そうした犬猫を、昔は地域の保健所が引き取ることもありました。それが2013年(平成25年)の愛護法改正で、

 

「業者から」引き取りを求められても、
「相当の事由」がなければ拒否できる

 

ことに変わりました:

第三十五条:(自治体は)犬猫等販売業者から引取りを求められた場合(中略)引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる

 

一時、「引取り業者」による不適切飼育や遺棄などがメディアを賑わせたのことがありました。この2013年の法改正がきっかけになったのは間違いないでしょう。

 

今回(2019年)の法改正は、「悪質な事業者を排除する」ことが目標でした。過去に起こった引取り業者などの「抜け道」防止には、最大限の配慮がなされたでしょう。

 

企業として当然の責務?

で、「業者がいらなくなった犬と猫」を引き取る仕組みとして登場した「1号店」。もちろん、活動そのものは重要です。

 

 

目の前に行き場のない「命」が現実にあるわけです。その命の行き先を見つける活動自体には、まったく異論はありません

 

でも、システムを見ていくと、子犬・子猫の販売と同様な違和感がぬぐえません。

 

世間の常識とは一線を画す、
ペットショップ運営企業の姿勢が
ここにも表れている印象を受けます

 

あくまで、個人的な感覚ですが…。

 

次回は、そんなトコロを考えてみたいと思います。皆さんは、どうお感じになるでしょうか?ご意見をお聞かせ頂ければと思います。